ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロがライダーカップで欧州チームの主将を務めたルーク・ドナルドについて解説しています。
画像: 「大会前、過去3回のライダーカップで成績の悪かったフィッツパトリックに対し米国メディアは酷評しましたが、『あのセベだって初出場した時は1勝4敗』と声をかけたドナルド。歴史を知り、伝統を重んじ、気配りのできる最高のキャプテンです」(佐藤プロ)

「大会前、過去3回のライダーカップで成績の悪かったフィッツパトリックに対し米国メディアは酷評しましたが、『あのセベだって初出場した時は1勝4敗』と声をかけたドナルド。歴史を知り、伝統を重んじ、気配りのできる最高のキャプテンです」(佐藤プロ)

今回は、随所に見せたルーク・ドナルドのキャプテンシーについて。23年のイタリア大会から連続でのキャプテン。前回同様、大会後のセレモニーで湧き起こった「2 more years 」(2年後ももう一度)の大合唱は、彼の優れたリーダーシップを物語っています。 

多くの人は、キャプテンの仕事は12人のメンバーをどう組み合わせ、どの順番で戦わせるのかを決めることだと思っているでしょう。それも重要な任務です。しかしドナルドの細やかな心配りを見ると、「キャプテンとはそこまでするものなのか」と驚きます。敵将のキーガン・ブラッドリーは大会後の会見で、「ルークはライダーカップ史上、一番素晴らしいキャプテンだったと思う」と言いました。 

まず、5ポイント差で勝った前回のイタリア大会の流れをほぼそのままつなげました。メンバーは兄のニコライ・ホイガードが弟のラスムスに代わっただけ。ラスムスは初出場ですが、前回は一緒にカートに乗るなどサポートに回り、ライダーカップの〝熱〞を肌で感じた一人です。バイスキャプテンもニコラス・コルサーツがアレックス・ノレンに代わっただけでトーマス・ビヨン、モリナリ兄弟、ホセ・マリア・オラサバルと同じ布陣。この人選は単に経験や特性を考慮したものでなく、歴史と伝統への敬意の表れだと思います。

また前回に続き、欧州ツアーのBMW選手権を最終調整と位置付け、子どもが生まれたばかりのストラカを除く11人が出場。そしてニューヨークのベスページブラックが会場のため、ニューヨーカーの半端ないやじ対策としてバーチャルゴルフを使いやじやブーイングの中でプレー。選手の心の準備と同時に、ニューヨーカーへの穏やかなくぎ刺しだった気がします。 

試合の印象は、欧州側がアメリカファンを挑発する行為はほとんどなく、アメリカファンも初日はおとなしかったように思います。ドナルドが選手たちに極力ニューヨークのファンをあおるような行為をしないように注意したのだろうと思います。アメリカが劣勢になるにつれてアメリカファンのやじがエスカレートしてそれにマキロイやローリーなどがキレるシーンは何度かありましたが……。実は「メダイナの奇跡」で、キャプテンのオラサバルがシングルスのトップバッターに抜擢したのがドナルド。彼が穏やかな性格でメダイナのあるシカゴのノースウェスタン大学出身でファンも多いので、激しいアウェイムードにならないのではという考えからでした。 

アウェイで欧州選抜が勝ったのはこれで5回目。実は欧州チームのウェアは、過去4回のウェアをモチーフにしたものだし、睡眠がよく取れるよう遮光性の高いカーテンや、シーツや毛布、香りのいいシャンプーを特注したりと、すべては選手の力を発揮させるため、チームを勝たせるためにこの2年間を費やしてきたのでしょう。「2 more years 」の大合唱に、「あと2年は心臓が持たないよ。まずは今夜を楽しみたい」と答えたドナルド。続けて「We willsee」。その話はまた後で、といったところでしょうか。個人的には次のアイルランドでも、ライダーカップ史上最高のキャプテンが見られると思っています。

PHOTO/ PGA of America

※週刊ゴルフダイジェスト2025年10月28日号「さとうの目」より

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