4月17日、ワンウェイGCにて「デフゴルフ&男女プロ交流デー」が開催されました。目的は、若手選手の発掘、デフゴルファー全体のレベルアップ、そして共生社会を推進するイベントとしての取り組みを参加者や協賛企業へPRし、今後も参加・協賛を継続してもらえる環境を作ることです。

今回参加した皆さん。やはりコースを使ってのレッスン会には熱が入ります
主催した日本デフゴルフ協会事務局長の袖山哲朗さんによると、「コロナ禍や高齢化で日本デフゴルフ協会の会員数・大会参加者数が減少しているなか、協会の発展につながる取り組みを検討しました。その際、約28年前から毎年開催されている『東京都フィランスロピー障害者ゴルフ大会』に注目したのです。同大会は各組にティーチングプロが1名帯同してラウンドレッスンが受けられること、全員に賞品があること、プレー代込みで参加費が安いことなど多くのメリットがあり、毎年100名近い参加者が集まっています。また、継続的に参加する最古参の選手なども多いことから、これを参考にラウンドレッスン企画を考案しました」とのこと。
今回は、デフゴルファー10名、ボランティア(健常者)5名が参加。初めてゴルフをプレーする方や、日本人の奥さまを持つカナダ出身のデフゴルファーも参加し、「多様な人々が楽しめる」というゴルフの魅力を体現する機会となりました。

埼玉在住、キッチンカーで働くカナダ人レフティ。スポーツ歴はアイスホッケー。「インスタグラムで協会のアカウントを見て、DMをいただいたのがきっかけです」(袖山)
午後のラウンド開始前には、手話やルールのプチ勉強会が開かれました。「上手い人や周りのプレーを見て、前の組に離れないように付いていってください」(袖山さん)とプレーファストの徹底を呼びかけ、さらに手話で、パー、バーディ、ボギー、アルバトロス、ナイスショット、ダフリ、トップ、数字など……ゴルフ用語を中心にレクチャー。皆さん真剣に聞いて実践していました。こういった時間も大切ですよね。しっかり頭に入れてラウンドレッスンに向かっていきました。

ラウンド前にルール&手話レクチャー。協会作成のTシャツには「パー」と「バーディ」の手話をプリント。「ラウンド後、健常者の方々も手話を使って、一緒に盛り上がれたとの声が多く嬉しかったです」(袖山)
今回帯同したプロは2人。
「シーズンインの時期と重なりスケジュール調整が難しく、最終的に2名しか確保できませんでした。そのため、休憩を取る余裕もないほど負担をかけてしまい、申し訳なく感じています」と袖山さんは言いますが、2人のプロは「こちらも勉強になり充実した時間でした」と口をそろえます。
まずは、袖山事務局長とも親交が深い“義足のプロゴルファー”吉田隼人プロ。
「練習場のレッスン会には参加したことがありますが、ラウンドレッスンは初めてでした。この日初めてラウンドする方もいましたけど、スウィングも綺麗だしそんな感じはなかったですね。でもやはり、芝の上から打つことや傾斜地ではどう打つのかなど、練習場と違う環境での対応力が求められます。そこは、ケガをしないことを第一に伝えたつもりです。
音がない世界でプレーするので、ラウンドレッスンでは『打つ人の前には出ないように』としっかり伝えます。集中力が高い分、周りの状況がわからなくなり危険を伴うためです。手を振ったり、肩を叩いたりして知らせることも大事な方法です。技術面では、インパクトの音を感じるのは難しいと思いますから、芯に当たった感覚を『軽く感じるでしょう』と言葉で伝えるようにしました。フェースに乗ったときは弾くのも早いですし、軽く感じるんですよ。アプローチでもそうですけど、フェースのどこに当たったかを確認しながらプレーすることも有効だと思います。皆さん伸びしろがありますし、何より楽しそうにやってもらえました。また予定が合えばぜひ参加したいです」

褒め上手な吉田隼人プロ。ラウンド前には「怪我なく楽しんでやりましょう」とニコニコ。コース内ではまず、各人に狙い場所をしっかり確認して打つように教えていました
もう一人は、5回目の参加だという女子プロゴルファーの新井麻衣プロ。
「皆様にゴルフの技術の提案をさせていただく立場でもあり、皆様から手話を学ばせていただく立場でもあります。学び合える貴重な機会で、毎回新たな発見ばかりです。とても有難い時間で、参加させていただけることを嬉しく思います。
ご参加くださった方のなかには、昨年11月に開催された東京2025デフリンピックをきっかけにゴルフを始められた方々も数名いらっしゃいました。僭越ながら女子監督としてデフリンピックに携わらせていただいた私としては、選手達の勇姿が多くの方に届いた事に心が震える思いでした」

手話も交えながら一生懸命教える新井麻衣プロ。「スウィングが早くなる方が多かったので“ゆっくり”を意識して。ラウンドではテーマを1つに絞って挑戦してください。頑張って!」と激励
「一番大事にしたのは『聞き取り』の時間です。皆様とのコミュニケーションは、会話、(手話を学び始めた私が読み取れる範疇の)手話、文字起こしアプリです。感覚を言葉にすること、文字にすること、どちらもとても難しいことです。語弊があるかもしれませんが、言語の違う相手に悩みを話すことと同じような難しさを感じられた方もいらっしゃるかもしれません。『本当はもう少し違うことを伝えたいんだけどな……』と思わせてしまわないように、聞き取りの時間に重点を置くことを意識しました。
技術の提案を行わせていただく際は、質問しやすい雰囲気作りを意識しました。たとえば、『アドレス時に肩甲骨を寄せてください』と『アドレス時に背骨を下に落としてください』。この2つは体に起こる現象はほぼ同じですが、まったく違う印象を持ちますよね。1つのイメージだと『できないといけないこと』と思わせてしまいやすいですが、複数のイメージをお伝えすることによって『このイメージならできそうな気がする』と前向きな言葉をいただくことが多いです。そこから始まるコミュニケーションを大事にしながら、技術の提案を行わせていただきました。
『あの伝え方で良かったかな』『時間配分間違えてないかな』と不安ばかりですが……今回はスタート前のおよそ3時間の練習+ラウンドで、プチ合宿のようなスケジュールでした。『こんなに全力でゴルフができたのは初めて。楽しい』『レッスンを受けたのが初めてで嬉しい』『初めてパーを取れました!』など、明るい言葉をたくさんいただきました。 デフゴルフ協会の方のお話では、デフゴルファーの仲間をもっともっと増やしたいとのこと。今回のような素敵なイベントがどんどん増えると思います。その際、私にお手伝いさせていただけることがあれば、喜んで出席させていただきたいですね。今回はゴルフ手話の講習会もあったので、しっかり復習します。また次の機会に向けて、技術と手話の勉強も行っていきます」

午前中のレッスンの感想について、参加者全員が笑顔で「とてもよかった」と答えていました。「こちらが驚くほど好評で嬉しかったです。ここからまた、デフゴルフが広がっていけばいいですね」と袖山さん
教える側、伝える側の“熱量”も高い!この熱波がどんどん広がっていくことを願います。今後も協会主催のイベントや試合はたくさん予定されています。ぜひ、参加してみてはいかがでしょうか?

賞品もたっぷりと。モチベーションは大事です!30年近く続く「東京都フィランスロピー障害者ゴルフ大会」を参考に今回のイベントを立案したそうです
<予定>
7月/東日本&西日本デフゴルフオープン大会
8月/世界デフゴルフ選手権INスウェーデン
8月下旬/日本デフゴルフ選手権IN鳥取県
11月2日/ザチャレンジドゴルフトーナメントの前日、デフゴルフ&男女プロ交流デー(西日本)企画予定
11月/東日本&西日本デフゴルフフェスティバル


