同郷の後輩、ジャスティン・トーマスと激闘を繰り広げた
1926年に「ロサンゼルスオープン」として始まり、約90年以上の歴史を誇る「ジェネシスオープン」。今年のチャンピオンは、2015年ヒューストンオープン以来4年ぶりに勝利を挙げた、ツアー通算5勝目のJ・B・ホームズだった。この優勝により、フェデックスカップランクでは9位に浮上。世界ランクでは100位から一気に42位と、メジャーやWGCイベントに出場できる位置にまで急浮上した。
もともと家族旅行を翌週に控えていたホームズは、WGCメキシコ選手権行きの切符を手に入れたものの欠場。しかし、2年ぶりにマスターズに出場できることになり、今年の海外メジャーに出場できる可能性が広がったのは非常に大きい。
昔からツアー屈指の飛ばし屋のイメージがあるが、彼は実は、見た目ほど健康ではない。子供の頃に失読症に悩まされたこともあり、2011年全米プロでは回転性めまい症、キアリ奇形(小脳・延髄および橋の発生異常を基盤とする奇形)で初日のプレー後に棄権。
その後脳の手術をするも、手術の際に使用した接着剤にアレルギー反応を起こし、再手術をしたという異色の経歴の持ち主だ。その他、ケガで試合を欠場するなど数々の苦労を乗り越え、復活してきた選手の一人である。
初日から悪天候に見舞われたリビエラCCだったが、6番ホールで自身2回目のホールインワンを決めるなど、幸先のいいスタートを切ったホームズ。2位のジョーダン・スピースと1打差の8アンダーで初日を単独首位で終え、その後も69、68と連日の60台をマークした。
3日目を終えて首位のジャスティン・トーマスとは4打差の2位タイにつけて最終日、最終組に臨んだが、ジャスティン・トーマスがポアナ芝のグリーン読みに苦戦してショートパットを外すこともしばしば。3バーディ、5ボギー、1ダブルボギーとスコアを大きく崩す中、ホームズは3バーディ、2ボギーしのぎ、トーマスを逆転して1打差で優勝したのだった。
「バック9は本当にタフだった。風もとても強かったし、パットも風のせいで難しかった。でも良いショットを打ち、カギとなるパットをいくつか決めることができてよかった。ここでロースコアを出すことはとても難しいことはわかっていたが、ジャスティン(トーマス)があまり調子がよくなかったことも自分にとっては幸いした。最初の方でバーディをいくつか取れたことも、ジャスティンにプレッシャーをかけることができたかな。今週は4時40分に起きて27ホールやることもあれば、11ホールで終わる日もあったり、あるいは33ホールの日もあった。タフな1週間だったけど、こうして最後に優勝できて本当にラッキーだったよ」
最後の36ホールをともにして1打を争ったトーマスとは同じケンタッキー州出身という同郷同士。ホームズは、25歳の後輩メジャーチャンピオンについてこう語る。
「彼は本当にすばらしいプレーヤーだ。こうして彼と一緒にプレーでき、戦えてよかった。初めて彼とプレーしたのは、たしか彼が12〜13歳の頃だったと思うが、彼はツアーで活躍するチャンスがあると思ってたよ。もちろんその年ではまだまだやるべきことはたくさんあったが、才能があることは明らかで、こうしてツアーに出てきて活躍すると思っていた」
一方、後輩のトーマスはホームズについて、
「最初にJBに知り合ったのはボクが7〜8歳の頃だったと思うけど、彼はいつもボクによくしてくれた。PGAツアーの練習ラウンドのときに、彼はボクをロープ内に入れてくれたりもした。けっして忘れないよ。あれから15年後に、まさか彼にリビエラでやっつけられてしまうとはね。ガッカリだよ」
とホールアウト後に語っている。普段は一緒に練習ラウンドをするなど、行動をともにしている二人を見たことがないが、意外と同郷同士ということで昔からつながりはあったのだ。
「勝つために戦っているんだから、スロープレーもその一部だよ」
さてホームズといえば、以前からケビン・ナなどと並び、スロープレーヤーとして有名だが、今回の最終日のプレーについても、SNSなどでプレーが遅いと批判を浴びた。
2018年のファーマーズインシュランスオープン最終日、最終ホールでも、2打目を打つまでにかかった時間はなんと4分10秒。大混戦の中、プレーオフに進むにはイーグルがどうしても必要だったということで、プレーも一層慎重になったのだろうが、ルーク・ドナルドやスティーブ・フレッシュらからはツイッター上で非難されていた、しかし、ホームズはそれに対し「勝つために戦っているんだから、スロープレーもその一部だよ」と開き直った。そしてその時ジャスティン・トーマスは、「ボクも同じ立場にいたらそうすると思う」と同郷の先輩をかばっていたことがあった。
そして今回、ホームズは優勝会見でスロープレーについて問われると、「時速25マイルの強風が吹いていたし、グリーンは速かったんだから、やさしくないよね。風を読み、傾斜やラインを読まなければいけないし……」とホームズ。
決して最終組だけが遅かったというわけではないので、ホームズだけに非難を浴びせるのは不公平な気もするが、実際一緒に回っていたジャスティン・トーマスとアダム・スコットの二人は、待ちに待たされてペースが乱れてしまったようである。
「実際、遅かったね。自分たちの組が、ということではないが、ボクとアダムは少なくとも待たされて苦戦していた。スローゴルフと悪いゴルフというのは性質が違うが、アダムとボクは良いゴルフができてなかったので、ペースをキープするのが難しかった」
待たされてペースが乱れたから調子が悪かったのか、調子が悪いからペースが乱れたのかについては、ホームズの責任ということもないと思うが、今年から「スロープレー」を改善しようとルール改正までしたのに、スロープレーがまったく改善されていないのは、なんとも皮肉。
今大会でさらにまたプレーの速度について、R&AやUSGAなどで話し合われることになるだろうが、こうしてスロープレーヤーの代名詞のような選手があの難しい状況下の中できっちり成績を収めていることを考えると、制限時間内なら大丈夫、と考えるホームズスタイルでいいのかどうか、微妙なところである。