ヘッドスピードを上げるには「切り返しの初速」が重要
まずは大西の現在のヘッドスピードをチェックするために一振りしてもらったところ、結果は49.4m/sを叩き出す。十分速いのだが、それでも弥永は「切り返しが非常に遅いです」とバッサリ切る。
「非常に丁寧がゆえに切り返しがゆっくりになってしまっています。効率の良いスウィングをするにはもちろん丁寧さも必要なんですけど、ゆっくり振ってしまうとやはりスピードは出ません」(弥永)
大西は「ボールの少し先、フォローに向かって加速する」意識で振っているというが、これも弥永曰く「もったいない動き」。
「ヘッドは加速しながらではなく、加速し終わって最高速が出た状態でボールに当てたい。そのためには切り返しの時点でスピードが必要なんです」(弥永)
ではさっそく切り返しのスピードを意識したスウィング法を教えてもらおう。
「ヘッドを動かすのではなく、上半身を右側に向けるようにバックスウィングしましょう。イメージとしては自分の右側に立っている人にドライバーのソールを見せてあげるような感じです。このとき体をねじる意識は必要ありません。体を緊張させてしまうとパフォーマンスは落ちてしまうので、むしろ脱力していたほうが瞬間的なスピードを上げやすいんです」(弥永)
ヘッドの動きを意識すると重たいものを持ち上げるようなゆっくりとしたスウィングになってしまい、ヘッドが先行すると体が遅れ、体の軸もズレてしまう。「逆に体だけ先に行くぐらいでいいです」と弥永。
「この状態からコックを入れてクラブを垂直にします。このポジションだとクラブを軽く感じられると思います。ここからヒジを上げるようにトップまで上げましょう。あとは軽いものをヒョイっと下ろすように切り返すだけで、力感を出さずにスピードを出せます」(弥永)
弥永の教えを受け、切り返しの初速を出す意識で再びスウィングする大西。すると、ヘッドスピードは49.4m/s から52.5m/sにアップ!
「ボールの先に向けて加速させていくイメージだったのを、切り返しの初速を上げていくイメージで振ってみたら、それだけで3m/s近く上がったのでビックリしてます」(大西)
このまま終わっても十二分な成果と言えるが、「まだまだ伸びる余地があります」と弥永。
「ヘッドスピードは上がりましたが、まだフォローに向かって加速する意識が残っています。なので、次はインパクト位置をズラすイメージで打ってみてください」(弥永)
弥永が示したのは、ボールの位置ではなく、ハーフウェイダウンでのヘッド位置。ここをインパクトだと思って、そこに向けてヘッドのスピードを最高速にせよというわけだ。切り返しからインパクトまでの距離が短くなることで、より切り返しのスピードを上げるイメージが湧くという。
「ポイントはグリップを引き込むように打つことです。ヘッドが大回りになってしまうと切り返しのスピードは出ません」(弥永)
アドバイスを受け、再びスウィングする大西。すると、なんとヘッドスピード53.9m/sを叩き出した! 約15分程度のレッスンで4.5m/sものヘッドスピードアップに成功。飛距離に換算すれば30ヤードほども伸びることになる。しかも受講者が飛ばしのコツを知らないアマチュアではなく、プロの指導をするコーチだというのだから驚きだ。
「切り返しはゆっくりと、と言ったことを耳にしますが、『ゆっくり下ろすんだったら、なぜ上げたんだ』と(笑)。切り返しではとにかく初速を出し、インパクト前に加速を終えるのが飛ばしには大切なんです」(弥永)
ヘッドスピード53.9m/sもさることながら、コンスタントに50m/sを越していたことに大西は驚きを隠せない様子。しかも、はたから見てもバランスを崩すような“マン振り”には見えない。
「今まで50m/sを超えることってなかったんですけど、安定して出せるようになりましたね。力を入れずに無理なく打てるので、体にもやさしそうなスウィングなのかなと思います。自分の指導にも活かそうと思います!」(大西)
切り返しの初速を意識すれば、ヘッドスピードは簡単に上がる。プロコーチにも効果絶大なのだから、我々アマチュアに効かないわけがない。
協力/ゴルフ生活