アンカリング禁止後、試行錯誤して辿りついたエースパター
2011年の全米プロゴルフ選手権を制しメジャーチャンピオンに輝いたキーガン・ブラッドリーは、長尺パターを腹部に固定して打つ「アンカリング」が2016年に禁止されたことで、もっとも影響を受けた選手のひとりでした。
全米プロに勝った年に2勝、翌年に世界ゴルフ選手権のビッグタイトルも獲得。ゴルフ殿堂入りしているパット・ブラッドリーを伯母に持つゴルフエリートは、着実にスター街道を歩んでいるように見えました。
ボールストライクに関してはツアーのトップクラス。ロングゲームのスタッツは常にトップ10。例えば、2020‒21年シーズンのグリーンを狙うショットのスコアへの貢献度(ストロークゲインド)が全体の4位、トータルドライビング5位とショットメーカーとして一目置かれる存在です。
それに比べてパッティングは見劣りします。とくにアンカリングが禁止されてから苦しみ、パッティングのデータは100位以下。2019‒20年シーズンには185位、2020‒21年シーズンは186位と低迷を極めました。ショットがいいのにパットが決まらないストレスは、我々が想像する以上だったことでしょう。
キャリアの途中で武器だった長尺パターを取り上げられた彼は、数え切れないほどのパターを試し、さまざまなグリップスタイルに挑戦しました。その過程でアームロックまたはリストロックに辿りつき、オデッセイのマレットパターで戦うことを選択しました。
9年前に使っていた大型マレットのジェイルバード
さらに2021年、著名なパッティングコーチのフィル・ケニオンに師事してから大きな変化が訪れます。9年前に発売されたパター、ジェイルバードに戻すことで弱点を強みに変えることに成功したのです。
そのオールドパターを駆使し、昨年のZOZOチャンピオンシップでブラッドリーは4年ぶりにツアー5勝目を挙げました。その大会で2位に入り復活をアピールしたリッキー・ファウラーも、実はジェイルバードパターの使い手でもありました。
キーガン・ブラッドリーが使用するパターは白と黒の特大マレットで、プレーヤーの意図したラインでボールをコントロールできるといわれています。選手の復活を請け負ったパターについて、次回詳しく解説していきましょう。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月23日号より(Arrange/Mika Kawano Photo/Hiroyuki Okazawa)