クラブの振り心地を調整するアイテムの“鉛”。実はこの鉛、世界で活躍するトッププロのギアをよく見てみると意外と活用されていることをご存じだろうか。たった数グラムで何が変わるの? と侮ることなかれ。これから紹介する鉛の上手な活用法を参考に“鉛”であなたの悩みを一発解決しよう。

申ジエのパター鉛チューン。重いウェイトを外した後、鉛を貼って調整

画像: 申ジエのパターはオデッセイのトライビーム#1。ソールの後方に鉛を貼っているが、重いタングステンウェイトを外して軽くするための鉛チューン

申ジエのパターはオデッセイのトライビーム#1。ソールの後方に鉛を貼っているが、重いタングステンウェイトを外して軽くするための鉛チューン

まずは鉛チューンの実用例から。全米女子オープンで2位タイに入り、今年の日本ツアーでメルセデスランキング2位に付けている実力者、申ジエ。6月末に行われたアース・モンダミンカップで優勝を飾った裏には鉛によるパターの微調整があった。

「(その試合の)最終日はトウとヒールに装着していた鉛を5グラムずつ、計10グラム軽くしてその代わりに3グラムの鉛を貼ってプレーしました。7グラム軽くした理由は、パッティングは感覚が大事で1~2グラムでもバランスの変化が大きくて、そのときに『重いな』と感じ、そうなると無意識に手に力が入ってしまうので軽くしたんです。上位争いをしていると、ただでさえ力みやすいので……」(申ジエ)

申ジエの鉛チューンに関して、愛知県の日進ゴルフエトワスで多くのゴルファーを指導し、ギアカスタムにも詳しい早川佳智プロに聞いてみた。

「パターのフェースから離れたところに貼っていますね。自分の感覚を大事しつつも、少しでも重心位置を深くしてフェース面を真っすぐ出しやすくしたい現れです。要は貼り方によって、いかようにでも調整できるのが鉛の素晴らしいところなんです」

トッププロがやっている鉛貼りの実例

鉛を活用しているのは、申ジエだけではない。世界の松山英樹のセッティングを覗いてみると、そこには鉛チューンされたクラブの数々(2023年春時点のクラブ)。実は無類の鉛マニアだったのだ。どんな意図があるのか早川プロに読み取ってもらった。

画像: 松山英樹のクラブセッティング。ドライバーに1カ所、3Wは2カ所、5Wは3カ所、ウェッジ、パターにも鉛を貼って振り心地を整えている(写真は今季初頭のもの)

松山英樹のクラブセッティング。ドライバーに1カ所、3Wは2カ所、5Wは3カ所、ウェッジ、パターにも鉛を貼って振り心地を整えている(写真は今季初頭のもの)

ドライバーからパターまで、松山英樹の鉛チューン

ドライバーは、ヒール側に鉛。「単純につかまりをよくする効果を狙っていると思いますが、松山選手ほどの世界のトップ選手ですと、たった1~2グラム程度でも感覚が変わり、スウィングに大きく影響するのでしょう」。

3Wは、ヒール後方とネック部分。「ボールを上げながらつかまえたいんでしょう。フェードを打っているからダウンスウィングでフェースを開かせたくないという意図も感じます。ネックに貼っているのは、全体重量を上げつつヘッドを感じたいのだと思います」(今はスリクソンの3Wを使う)。

5Wは、ヒール後方とソール後方部とネック部分の3カ所。「重心深度を深めにしている貼り方なので、ピンまで250ヤードを高さでピタッと止めるショットを打ちやすくしているのかもしれません。ネックの鉛は、3W同様、総重量を出してヘッドを感じたいからだと思います」。

ウェッジは、バックフェースのセンター。「ボールの下にヘッドが少し潜る感覚を出しつつ、スピンをかけていきたいのかな、と思います」。

パターは、ソール全面。「7~10グラム程度だと思いますが、総重量を上げヘッドを利かせたいという狙いなのかもしれません」。

スコッティー・シェフラー、リディア・コー、畑岡奈紗、平田憲聖の貼り方

画像: スコッティー・シャフラーは4Iのバックフェースに多めの鉛(左上)。リディア・コーはミドルアイアンの下寄りに鉛(右上)。畑岡奈紗は3U・4Uのソール中央からフェース寄りに鉛(左下)。平田憲聖はアイアン型3Uのバックフェース下寄りに鉛(右下)

スコッティー・シャフラーは4Iのバックフェースに多めの鉛(左上)。リディア・コーはミドルアイアンの下寄りに鉛(右上)。畑岡奈紗は3U・4Uのソール中央からフェース寄りに鉛(左下)。平田憲聖はアイアン型3Uのバックフェース下寄りに鉛(右下)

世界で戦うトッププロたちの実用例も見てみよう。男子世界ランク1位のスコッティー・シェフラーはヘッドがやや軽くて大きめサイズの4番アイアンのバックフェースに貼ることで、「重量を出してフェースターンさせやすくしている」という。

長年、第一線で活躍するリディア・コーは、アイアンのバックフェースのトウ寄りに鉛。「フックを嫌った、つかまりを抑えた」貼り方。「重心距離を長くしています」。

畑岡奈紗は、ユーティリティのソール真ん中からフェース寄りに貼っている。「つかまりを抑え、吹き上がりを防ぎ、直進性の強い球を打ちたいという意思が伝わります」。

ミズノオープンと日本プロ優勝、ブレーク中の平田憲聖は、アイアン型UT3番のバックフェース下寄り。「おそらくヘッドを軽く感じて貼っていると思いますが、重心を下げることで、距離を出しつつボールを上げてグリーンを狙っていきたい意図も感じとれます」。

クラブ別、プロおすすめの鉛チューン実践編

画像: ドライバーはヒール寄りに貼るとつかまりが良くなる(左上)。アイアンは下部に貼ると高く上がり打点ブレに強くなる(右上)。パターはセンター後方に貼ると左右のミスが小さくなる(左下)。ウェッジは上側に貼ると、重心が上がりスピンが強まる(右下)

ドライバーはヒール寄りに貼るとつかまりが良くなる(左上)。アイアンは下部に貼ると高く上がり打点ブレに強くなる(右上)。パターはセンター後方に貼ると左右のミスが小さくなる(左下)。ウェッジは上側に貼ると、重心が上がりスピンが強まる(右下)

では、自分で鉛を貼って調整するにはどうしたらいいのか。引き続き、早川プロにクラブ別の症状に合わせた鉛の貼り方を聞いた。

ドライバーでスライスの悩み改善。ヒール部へ鉛を貼る。そうすることで重心角が大きくなり、フェースが開きにくくボールがつかまりやすくなる。

アイアンで球が上がりにくい悩みを改善。バックフェースのなるべく下側へ鉛を貼ることで、重心位置を下げ、ボールを上げやすい効果が出る。重心深度も深くなるので、打点ミスも軽減しやすい。

パットでの引っかけを改善。ソール後方に鉛を貼る。さらにセンターのフェース面から一番離れた部分に2~3グラム程度の鉛を集中して貼る。重心深度が深まることで、引っかけを防ぐ効果が上がりミスヒットに強くなる。また、重心位置がヘッドの後方に移動するため、ロフト角をつぶすことなくボールに順回転を与えやすくなる。

ウェッジでダフリの悩みを改善。バックフェース上部に鉛を貼る。重心位置が高くなるため、インパクトでフェースが立つように動き、スピンが掛かりやすくなる。

鉛の貼り方のポイントとしては「大胆に大きく貼ること」だと早川プロ。「5グラム以上貼れば、重心点がかなり変化してきますので、振り心地が変わります。その中で、何が自分に合うのか微調整してください」。

画像: シャフトの手元側に鉛を巻いてからグリップを装着(左写真)。手元が重くなって、手元が浮くミスが軽減するという(右上・右下)。早川プロおすすめの鉛チューンだ

シャフトの手元側に鉛を巻いてからグリップを装着(左写真)。手元が重くなって、手元が浮くミスが軽減するという(右上・右下)。早川プロおすすめの鉛チューンだ

最後に、とっておきの鉛チューンを教わった。

「アマチュアの多くは、ダウンスウィングからインパクトにかけて手元が浮いてしまい、フェースが開いたりボールを強く押し込めずに飛距離をロスしている傾向があります」

そうしたスウィングを改善するのに効果的なのが、鉛によってカウンターバランス効果を作り出すことだという。

「グリップを装着する前に施す必要がありますが、グリップエンド側に鉛を巻くように貼ることで、手元が重くなるいわゆるカウンターバランス効果が生まれます。するとダウンスウィングで手元が下がりやすくなるためフェース面が開かず、自然と強くインパクトできるようになり飛距離が伸びてきます」。

DIYでできる、一番身近なチューニング。鉛活用、試しみてはいかが?

※週刊ゴルフダイジェスト2023年8月1日号より(PHOTO/ARAKISHIN)

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