ラフからのアプローチで最も重要なのはライの判断だと言う横田プロ。「経験豊富なプロなら、そのライからどんな寄せ方ができるかを瞬間的にイメージできますが、その想像力がない人は、まず『ちゃんと当てる』ことを最優先すべきです。そのうえで距離やピン位置などの条件がよければ寄せられる可能性がありますが、難しければ『出すだけ』になる。この『割り切り』が大事です」
5つの要素をうまく組めば、夏ラフでも寄せられる
では「ちゃんと当てる」にはどうしたらいいのか。そのための打ち方を5項目に整理してもらった。
①フェースは必ず開く
ラフではネックに芝の抵抗が大きくかかり、フェースがかぶりやすいためフェースは必ず開く。芝の抵抗が大きくヘッドスピードを上げる必要があるときがフェースを大きく開き、開きすぎると下をくぐる場合は開き具合を小さくする。
②ボール位置の基準は右かかとの前
基準のボール位置は右足かかと前。ボールが芝に沈んでいたり逆目など、手前側の芝の量が多くフェースとボールがきれいに当たらなさそうなときほど右に寄せ、浮いていてきれいに当てられそうなときは左に寄せて構える。
③グリップの持ち方
脱出を優先する場合やボールが沈んでいるときなどクラブの重さでエネルギーを出したいときや、ヘッドを深く入れたいときは長く持ち、スウィングをコントロールして感覚を生かしたいときは短く持つ。
④グリップの強さ
ヘッドを走らせたいときはグリップをゆるく握る。クラブの動きを自分でコントロールして上手く打てそうなときはしっかり握る。
⑤振り幅
芝の抵抗が小さい場合、振り幅は小さく、抵抗が大きい場合は大きく振ってヘッドスピードを上げる。
これら5つの項目を具体的にどのように組み合わせればよいのだろうか。実例を見ていこう。
Case1深いラフに沈んでいる
「寄せるのは無理、脱出最優先で考えましょう。ヘッドをボール下まで届かせてボールにちゃんとコンタクトさせること、芝の抵抗に負けないことを重視します。ボール位置を右にするぶんフェースの開きは中。クラブのエネルギーを最大にするためにグリップを長く、ゆるく持って大きく振ります。フォローはとらず“打ち込んで終わり”でOKです」。
フェースの開き→中・ボール位置→右・グリップ長さ→長・グリップ強さ→弱・振り幅→大
Case2深いラフに浮いている
「ボールが浮いてさえいれば、芝が長くてもある程度コントロールした球が打てます。クラブを短く持って重さを消し、ややしっかり握って、空中を振るようなイメージでスウィングをしましょう。ボールの先の芝の長さがあるぶん打ち出し角を確保したいので、フェースは少し開きますが、開きすぎると下をくぐるミスになりやすいので注意が必要ですよ」
ただし芝目が逆目の場合には注意が必要で、芝に浮いていても抵抗が強く、フェースとボールの間に芝が入り込み、うまく打つのは困難なため、「Case1と同じように対処するのがいい」と補足。
フェースの開き→中・ボール位置→中央・グリップ長さ→短・グリップ強さ→中・振り幅→中
Case3浅いラフに沈んでいる
「芝の抵抗に負けないようにグリップを強めに握り、クラブを体の中心にホールドしたまま、シャープに振ります。当てることを重視してボールを右に置くので、球は上がりにくく止まりません。芝が短くても油断せずに、脱出最優先で考えましょう」
フェースの開き→中・ボール位置→右・グリップ長さ→中・グリップ強さ→強・振り幅→中
Case4浅いラフに浮いている
「油断すると下をくぐるので要注意。上手く打ててもスピンは減るので、普段よりもランが増えます。そのぶんバックスウィングは抑えめにし、フォローは基本通りに緩めず振りましょう。またクラブは長く持ちすぎず、芝の抵抗を考慮してフェースは少しだけ開いておきます」
フェースの開き→小・ボール位置→左・グリップ長さ→中・グリップ強さ→中・振り幅→小
Case5芝の向きが横目のラフ
「芝目とスウィング向きの角度が数度変わるだけで全く状況が異なるので、判断はとても難しいです。芝が外向きならインサイドアウト、内向きならアウトサイドインという具合に、なるべく順目方向のスウィングになるよう少し軌道が変わるように構えの段階から、向きを調整します」
「そして、ボールの近くに立ち、グリップを強く握って手首を固め、ショルダーストロークのようなイメージでスウィングすれば、大体のライから脱出できます。判断に迷ったら安全第一でこの打ち方をしてください」
フェースの開き→中・ボール位置→中央・グリップ長さ→短・グリップ強さ→強・振り幅→中
最後に横田プロから一言。「ラフ巧者は一日にして成らず。芝生とボールの沈み具合をよく見て予測を立て、実行してその結果を積み重ねることが大事です」
※週刊ゴルフダイジェスト2023年8月8日号より(PHOTO/Hiroyuki Tanaka、TEXT/Kousuke Suzuki、TEXT/CLUB HOUSE)