舞台となったのは、ノースカロライナ州のパインハーストリゾート。パインハーストには、#1から#8まで8つのゴルフ場が点在し、米国ゴルフの故郷とも呼ばれている。ここの#2は、全米オープンの開催コースとしてもお馴染み。
テネシー州のヴァンダービルト大学2年ゴルフ部のジャクソン・ヴァン・パリス選手は、パインハースト#4で行われた米国ノース&サウスアマチュア選手権で、9アンダーの61をマーク。#2に続く難コースと言われ、有名デザイナーのギル・ハンスが設計した#4のコースレコードをあっさりと塗り替えた。さらに、その3週間後、パリス選手はパインハーストのパー3コース(ここもギル・ハンス設計)で、またも新記録を作る。
9ホールのパー3コースでマークしたスコアは、なんと18! 1番ホールから5連続バーディを取った後、6番でホールインワンを達成。この時点でスコアは11。上がり3ホールは、バーディ・バーディ・パーで9アンダーの18。こちらも同コースのコースレコードとなった。
パリスくんは、もともとパインハースト育ちで、ジュニア時代にオールアメリカンに4回選出されている地元の有望選手でもある。5年前には、14歳で全米アマに出場し予選を突破。本戦に進出してマッチプレーで勝利を挙げたのはボビー・ジョーンズ以来の最年少選手となった。とはいえ、現時点での世界アマチュアランキングは44位だが、爆発力は実証済み。パインハースト#4で61をマークした2週間前にも、別のアマチュアの大会で61をマークしている。
パインハーストの#4とパー3コース、それぞれのコースレコードスコアの感想を求められるも、当のパリス選手は「あまり実感がありません。いいプレーをしているときはスコアのことはまったく頭にないですから」とクールな言葉だけ。かつて、名ゴルフコーチのピア・ニールソンが、目の前の1打に集中して自分の限界を打ち破り、18ホールすべてをバーディの54で上がる『54ビジョン』という理論を発表、当時の最強女王アニカ・ソレンスタムが傾倒し、宮里藍も続き、世界を席巻したことがあった。彼の9ホールでのスコア18は、まさにそれを地で行ったもの。世界には恐ろしい逸材がいるものだ。