ABINCとは、企業への生物多様性保全の促進を目的として2013年に発足した団体。発表によれば、2021年のG7サミットで、2030年までに生物多様性を回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」や、陸と海の30%以上を保全する「30 by 30目標」に向け取り組むことに合意。
これを受け、国内でもさまざまな取り組みが開始されている。「自然と共生する世界」を実現するための企業活動への期待が高まっている。同認証は工場や物流、建築などの分野に分かれ、現在145社が認証を受けるが、ここに「ゴルフ場版」が新設された。
国内ゴルフ場の多くは、開発時に自然の改変はあるものの、その後は、樹林や草地、水面など多様な自然要素ともに、地域の生物多様性保全に貢献する重要な緑地となっている。生物多様性に配慮したゴルフ場は持続可能な緑地の維持管理と、それにより経済を生む仕組みの1モデルともなり得ると、先進的な取り組みをしている神奈川県内の箱根CC、川崎国際生田緑地G、2つのゴルフ場へABINCが認証を付与した。
先進的な取り組みとはどのようなことだろう。箱根CCの金澤仁史総支配人に聞いた。「当コースは開場から70年ほどになりますが、植林などを繰り返した結果、以前あった環境とかけ離れてしまいました。そんななか、1990年代中頃から『箱根本来の自然に戻そう』という気運が高まり、本来の環境に戻すための施策を続けていました」。
そういった自然への回帰努力が認められたわけだ。「ゴルフ場は‟大きなビオトープ”と考えています。こういった意識が広まれば、ゴルフ界にも新たな価値が出るのではないでしょうか」(同総支配人)。この動き、ぜひ全国のゴルフ場へ波及してほしい。
週刊ゴルフダイジェスト2023年10月3日号より