とことんミスに寛容
TaylorMade「Qi10 MAX DRIVER」
『Qi10』の10は「10K」、つまり10,000g・㎠を意味し、今回『Qi10 MAX』がそのMOIを達
成する、象徴的なモデルとなる 前作で最も寛容性の高かったステルス2 HDと比較して
も、1300g・㎠程度MOIがアップ。究極のやさしさを目指した意欲作だ
今度のテーラーメイドは
芯を外しても当たり負けない、
飛距離が落ちない
カーボンウッドならではの余剰重量が生む進化
「マキロイが新しいドライバー使っている」、「タイガーも替えた」… … 昨年末からゴルファーの耳目を集めていたテーラーメイドの新モデルがベールを脱いだ。『Qi10』。ツアーではこのLSタイプが目撃されていたが、今回の本丸は実はこの『MAX』のようだ。
ここ数年のテーラーメイドは「スピード」(飛び)と「フォーギブネス」(やさしさ)の両立を目
指している。しかしこの2つは相反する性能でもある。スピードを出すためには重心は浅いほうが有利だが、やさしさを求めると重心を深くし、MOIを大きくすることが必須だからだ。
しかし、メーカーは今回の『Qi10 MAX』がこのトレードオフの関係を高次元で解消したと胸を張る。やさしさの面では、クラウンのカーボン占有率を97%まで引き上げるなどして、全体のチタンの割合を35%にまで低減。ここで得た余剰重量を活用し、極限まで周辺重量配分を進めたことで、究極ともいえる〝MOI1万〞を達成。ミスヒットにすこぶる強いヘッドとなった。
MOIを上げる、つまり深重心化が進むと、それに伴いフェース面上の重心は高くなり、結果としてスピンが増え飛距離にはマイナスに働く。しかし、ここでもフェースを含めたカーボン占有率の高さによって得た圧倒的な余剰重量を最適配分し、重心が深くても高くならないことを推し進めた。また3世代目となる進化したカーボンフェースがインパクトで一瞬ストッパーのようにエネルギーを受け止め、後方からヘッドの多くの重量がドンと押し込むことで、チタンドライバーには真似のできない初速性能につながる。
「テーラーメイドにハードなイメージを持っている人は一度打つべき。上級者でも、このスピードと寛容性は魅力的なはず。『Qi10 MAX』を使うプロが増えそうです」とは試打をお願いしたクールクラブスのカリスマフィッター平野義裕さん
ここポイント
名器『M2』にも採用された寛容性を高めるデザイン
名器と謳われた2代目M2にも採用されたソールとクラウンのつなぎ目に段差をつけた“ジオコースティック”デザインを彷彿させる形状。これによりさらなる寛容性の向上を実現している。
ここポイント
フェースを受ける新フレームがエネルギー効率を上げる
第3世代の60層カーボンツイストフェースとそれを受け止める新開発のボディ側のフレームにより、カーボンフェースによるエネルギー伝達効率が向上。
Qi10 MAXを試打
とにかく曲がらない。
この安心感はクセになる。
「往年のバーナーTP的な大きく丸いヘッド形状になじみのある人も多いのでは? 性能的には曲がらないうえに初速がかなり速く、ミート率も1.50。大MOIでミスに強いの
はもちろん、つかまりが良く扱いやすい点も魅力」
スタンダードモデルの飛びとやさしさは要注目
いよいよカーボンウッドは"熟成"の域へ
もちろん『Qi10 MAX』だけではない。コアモデルとなる『Qi10』、ロースピンモデルの『Qi10 LS』もラインナップされている。
赤からネイビーブルーに変化したフェース。従来の60層のカーボンシートの組み合わせをアップデートし、よりエネルギー効率を高めることに成功した。打球の曲がりを補正するツイストフェースも健在。
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バランスに優れる中心モデル
Qi10 DRIVER
まず『Qi10』。高初速、高打ち出し、低スピンといった飛距離アップの要素と、大MOIによる寛容性の高さを高次元で融合。アベレージから上級者まで幅広いゴルファーにマッチするQi10シリーズのコアモデルだ。
MOIの数値はMAXよりも小さいが、それでも前作のステルス2よりは大きく、寛容性がアップしている。対『Qi10 MAX』では、より重心が低く抑えられているために、高打ち出し&低スピンの飛ぶ弾道に。重心の高さだけ見ると、前作の低スピンモデル、ステルス2プラスとほぼ同等。もちろん新しいカーボンフェースによるエネルギー伝達効率の良さによりボール初速も向上。スピードとやさしさを高次元でバランスよく融合したモデルとなった。ヘッドも従来のテーラーメイドの流れをくむすっきりとした形状だ。
ツアープロから圧倒的支持を得る
Qi10 LS DRIVER
一方の『Qi10 LS』は、すでに世界のトップ選手がスイッチしている強弾道がウリのモデル。LSは〝ロースピン〞の意で、数値的にも重心はかなり低く抑えられ、より強弾道が打てる仕様になっている。
また、特徴的なソール前方の〝スライディングウェイト〞は空力も考慮され、ヘッドスピード向上に寄与する。
Qi10 & Qi10 LSを試打
「Qi10」
スタンダードモデルはつかまりがよく、低スピン。
「打感は以前より弾き感があって心地いい。Qi10 MAXよりもシャープに振り抜けて、打球も低スピンで強い。それでいて寛容性が高い、まさに万能という感じのドライバー」
「Qi10 LS」
真ん中を多少外しても高初速をキープする
「面長なヘッド形状でいかにも上級者が好みそう。とにかく低スピン&高初速が際立つ。トウ、ヒールに多少ずれたぐらいではボール初速が落ちないことに驚きました」
「コアモデルの『Qi10』は、MAXと比べると顔がシャープで振り抜きもシャープ。打球はより低スピン傾向で、かなりの飛距離アップが期待できます。寛容性は高いのに適度にヘッドの操作感もあるので、球を打ち分けたい上級者にも合うはずです。『LS』は、テーラーメイドの上級者モデルらしい洋なし形のヘッド。驚いたのはボール初速。すごく速いです。それがフェースの広い範囲で味わえるところに進化を感じます」(平野さん)
カーボンウッドはいよいよ熟成の域に到達したようだ。
飛びとやさしさがまた一歩進化した。
超強力ラインナップ
全ゴルファーを包囲する"200Yクラブ"
さらに評価を上げそうなFWの『TOUR』モデル
FWとレスキューもそれぞれ3モデルずつラインナップ。スピードを上げつつ、寛容性も高めるというコンセプトはドライバー同様だが、上級モデルはLSではなく『TOUR』の名に。これは単にロースピンではなく、FWであれば50グラムものウェイトが前後に動き、スピン量と弾道の高さが変化。レスキューであればアイアンライクな形状により弾道や球筋の打ち分けがしやすいからだろう。特にFWの『TOUR』は、前作のプラスからプロの評価が高く、今回もツアーを席巻する勢いは一段と加速しているように感じる。
大きく変化したのはやはり『Qi10 MAX』。投影面積が大きく、安心感にあふれる。それでいてスピンが増えすぎず、高打ち出しなのはドライバー同様だ。「しかも、どのFWもレスキューもボール初速がとても速い。この進化も驚異的です」(平野)
他のディスタンス系とはひと味違う。
アイアンだって"真っすぐ"が勝ち
ストロングロフトなのに高弾道で止められる
アイアンは1モデル『Qiアイアン』が登場。ロフトは7番で28度とストロングだが、単純に飛距離を求めたアイアンではない。それ以上に〝真っすぐ〞飛ばすことを狙ったモデルだ。
①余剰重量を生むホーゼル形状
余剰重量を生み出すため可能な限り重量を削ぎ落とした「フルーテッドホーゼル」を採用。低重心かつ重心を極力フェースセンターに近づける効果もある
②アイアンにも貫通型スピードポケット
アベレージゴルファーほど打点を下部に外し、飛距離をロスする傾向が多い。それを解消するのが貫通型スピードポケット。フェース下部の反発を上げ、下寄りのヒットでもエネルギーロスを防ぐ効果をもたらす ※スピードポケット搭載は#7まで
ポイントは番手別設計の重心位置と「フェース」にある。このフェースのテクノロジーは、人気のP790アイアンでも取り入れられているが、それをさらに進化させた。特にスイートスポットの面積においては前作比で14%アップし、遠くへ真っすぐ飛ばす理想に近づいている。
番手別に最適化されたフェース設計
5番では高弾道になるよう、7番では芯を広く反発が上がるよう、9番では飛距離と過度なスピンを抑制するよう、各番手で最適化が図られている
「7番で約190ヤードのキャリーに驚きましたが、落下角度も45度以上と十分。遠くへ真っすぐ、に加え、止まる。シビアな上級モデルを使う意味を考えさせられてしまいました」(平野)
※試打データはすべてナイスショット5球の平均値。FWは#5、RESCUEは#3、アイアンは#7で試打。計測はトラックマン4
【試打/平野義裕】
スイング碑文谷内にあるフィッティングスタジオ「クールクラブス」のカリスマフィッター。試打経験豊富でクラブの性能差を敏感に感じ取る
詳細はこちら
月刊ゴルフダイジェスト2024年3月号より