上位モデル『RS F』もまったく歯が立たないわけではない
GD 2024年はテーラーメイド『Qi10』とキャロウェイ『Aiスモーク』からはじまり、その後、発売されたドライバーも、総じて「スイートエリアの拡大」と「打ち出し初速の向上」を特徴としています。現在の打ち出し初速の向上(スピード化)に関しては、2016年のプロギア『RSドライバー』の「ギリギリ」によって幕が開けられたと言えます。
そのニューモデル「RS Xシリーズ」が6月3日に発表となり、今回いち早く試打をさせていただきました。今回のラインナップは『RS F』、『RS』、『RS MAX』の3タイプでしたが、打った印象はどうでしたか?
長谷部 3つのヘッドの違いを評価しなければいけないんですが、そもそもこの“RSギリギリフェース設計”というのを謳い文句にしていて、そこに開発の軸を持ってきているドライバーなので、初速の速さと飛びといったところをどう体感できるかという点を中心に打ちました。
一番やさしいと言われる『MAX』がやっぱり一番やさしく感じたのと、だからといってやさしすぎるとか、何か物足りないということはけっしてなく、やさしくて飛ぶドライバーだなという印象がありました。
『RS F』は逆に、ツアーモデルと言われるものは往々にして難しい印象を受けるんですが、『RS F』に関しては「まったく歯が立たない」ということもなく、『RS』も含め全体的にやさしい傾向のヘッド設計でキーワードのベリーイージーが具現化されているように感じました。
他メーカーのツアーモデルのようにまったく歯が立たないみたいことはないし、小ぶりのヘッドではなかったので、ツアーやアマチュアのフィードバックを取り入れながら3つのモデルを開発したのかな? と思います。
GD 長谷部さんはこの3つの「RS Xシリーズ」を打った時に、「迷うな……」と言っていましたが?
長谷部 難易度の高さで言ったら『RS F』が最上位で、『RS』、『RS MAX』という並びになっていると思いますが、難易度の幅が狭く、『RS F』と一番やさしい『RS MAX』、どっちにしよう? って迷うぐらい非常に狭い範囲で細かく調整されているような気がします。もし試打をして、良い感じのクラブに出合ったとき、「もうちょっとこうしたい」という希望に対して、選びやすくなる可能性があります。
GD シリーズの中で選択がしやすいってことですね。ロースピンモデル、レギュラーモデル、ドローバイアス、ライトウェイトのように同一シリーズであっても、性能差があると横へのスライドがしにくいものがあります。「RS Xシリーズ」は、そういった分け方をせず、ちょっとした味付けの違いになっているため、横へのスライドがしやすいと。
長谷部 そうですね。だから、難しすぎて使えないというモデルではないと思います。逆に打ちたい、希望する弾道を得やすいフィッティングが可能なシリーズなのかなって思います。
GD プロギアの「ギリギリ」がきっかけとなり、慣性モーメント重視、やさしさ重視のドライバー開発に「スピード化」の流れを作りました。プロギアを追いかけるように他メーカーもその後、「初速」を積極的に言うようになりましたが、テクノロジー的にいうとフェースの厚さ、ヘッドのたわみなんでしょうか?
長谷部 2020年モデルの「RS5」、2022年の「RS JUST」でいったんカーボンクラウンを採用しましたが、今回はフルチタンに戻しています。
戻した理由は、初速を最大化したいという思いがあったことと、チタンの製造技術がさらに進化していて、製造管理技術も上がっているため、チタンでできることをわざわざカーボンに変えて低重心化とか、余剰重量を取ることよりも、とにかくフェースで初速を上げ、反発の高い水準で安定的に供給することに特化しています。
形状設計から重心位置を調整する「4点集中フェース」と、ソール側の肉厚を調整する「ダブルソール」、それらがすべて相まって、とにかく初速をギリギリまで高くする設計を極めているのだと思います。
GD 「4点集中」というのは、フェースのセンターに、重心位置と最大反発点、最大CT値をもってくる?
長谷部 そうですね。今までフェースセンターは打点をイメージする場所なので、あえてトウ側に重心をずらしたり、ヒール側にずらしたり、たわみ点の最大化を左右に振ることによって安定した初速を得られる設計が過去にはあり、各メーカーがやっていました。
初速制限がある中で、ばらつく打点に合わせて平均的に初速を上げていく工夫だと言われていたんですけど、あえてプロギアはそれを1点集中にして最高の初速を出そうということに割り切っているので、これは非常に面白いですね。