スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化することができる、コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」。このアプリを活用しているゴルフコーチ・北野達郎に2度目の全米女子オープン制覇を達成した笹生優花のドライバースウィングを解説してもらった。

みんなのゴルフダイジェストをご覧の皆様、こんにちは。SPORTSBOX AI・3Dスタッフコーチの北野達郎です。今回は米LPGAツアーのメジャートーナメント「全米女子オープン」で、メジャー2勝目の快挙を成し遂げた笹生優花選手のドライバーショットをスポーツボックスAIで分析しました。

笹生選手のスウィングを分析すると、

1.ストロンググリップでフェースを返さないフォロースルー(方向性)
2.軸を右足側に残してアッパーブローのインパクト(効率)
3.ヘッドスピードを加速させる骨盤の上下の動き(速度)

この3点が特徴的でした。今回はその3点に方向性、効率、飛距離と、それぞれの動きに関連するワードも加えてみました。それでは早速スウィングを見てみましょう。

ストロンググリップでフェースを返さないフォロースルー(方向性)

まずグリップですが、特に左手をストロングで握るのが特徴的です。このグリップをする選手はフェースをなるべく返さないようにフォロースルーを取るのが特徴です。それを裏付けるデータをご紹介します。スポーツボックスのデータ項目「WRIST GAIN FACTOR」(以下リスト・ゲイン・ファクター)は、キネマティック・シークエンス(運動連鎖)を測る項目で、シャフトの回転速度÷左上腕の回転速度を表します。この項目を簡単にご説明しますと、この割り算の合計数値が高いほどリストターンが多く、低いほどリストターンが少ないことを表します。

画像: 画像①アドレスとフォロースルー/左手をストロングに握る笹生選手は、フォローでフェースを返さないので「リスト・ゲイン・ファクター」の数値が低めになる

画像①アドレスとフォロースルー/左手をストロングに握る笹生選手は、フォローでフェースを返さないので「リスト・ゲイン・ファクター」の数値が低めになる

笹生選手のリスト・ゲイン・ファクターは1.79で、LPGAツアーアベレージが2.0ですので、笹生選手はリストターンをあまり使わずフェースを返さないタイプの選手です。フォロースルーのP8ポジション(シャフトが地面と平行)は、おへそあたりの高さで迎えています。例えばもっとリストを使ってフェースターンする選手の場合は、P8がもっと低く早い位置で迎えてリスト・ゲイン・ファクターも数値が高くなります。あまり聞き慣れないワードではありますが、海外のレッスンでは「フェースターンでリストを使うタイプか否か?」を測る指標としてリスト・ゲイン・ファクターが活用されていますので、参考値の1つと捉えて下さい。

軸を右足側に残してアッパーブローのインパクト(効率)

続いてトップ〜インパクトを比較してみましょう。ココで注目したいのは、「胸と骨盤の左右の動きです。データ項目「CHESTSWAY」は胸、「PELVIS SWAY」は骨盤がそれぞれアドレスの位置から左右にどれだけ移動したか? を表すデータですが、トップで胸は−5.8cm(右)、骨盤は−1.9cm(右)で、骨盤がアドレスからあまり動かないのに対して、胸は右足の上に移動しているのが分かります。

画像: 画像②トップ〜インパクト/トップで胸は右足の上に移動して、インパクトまで胸が右足側に残り続けることでアッパーブローを生む

画像②トップ〜インパクト/トップで胸は右足の上に移動して、インパクトまで胸が右足側に残り続けることでアッパーブローを生む

そしてインパクトで胸は−10.9cm(右)と、より右足側に胸は残り、骨盤もインパクトで+3.3cm(左)と左に移動する距離はLPGAツアーレンジ(+5.8cm〜+15cm(左))と比較すると少なめで、トップから切り返しにかけて一旦左に踏み込んでからはその場で回転しているのが分かります。この一旦左に踏み込んでから右足側に軸が残る動きは「Zトレース」と呼ばれ、特にドライバーをアッパーブローにインパクトして飛距離を出すのに有効と言われています。このアッパーブローで効率の良いインパクトが、笹生選手の飛距離の秘訣です。

ヘッドスピードを加速させる骨盤の上下の動き(速度)

最後に3つ目の特徴である「骨盤の上下の動き」を見てみましょう。データ項目「PELVIS LIFT」は、骨盤がアドレスの位置から上下にどれだけ移動したか?を表しますが、トップで骨盤は−6.6cm(下)にアドレスより下がっており、切り返しでは左に踏み込む際に骨盤はさらに下がって最大−11.1cmまで骨盤が低くなります。

画像: 画像③トップ〜切り返し/トップから切り返しにかけて左に踏み込むと同時に骨盤が低く下がっている

画像③トップ〜切り返し/トップから切り返しにかけて左に踏み込むと同時に骨盤が低く下がっている

このトップ〜切り返しにかけて左に踏み込んで低く下がった骨盤は、インパクトではアドレスより+0.5cmまで上昇しています。この一旦低く下がった骨盤がインパクトにかけて上昇しているデータが地面反力を受けている証拠です。

画像: 画像④切り返し〜インパクト/切り返しで1番低く下がった骨盤が、インパクトではアドレスの位置付近まで上昇している。下半身を踏み込んだ地面反力を受けている証拠

画像④切り返し〜インパクト/切り返しで1番低く下がった骨盤が、インパクトではアドレスの位置付近まで上昇している。下半身を踏み込んだ地面反力を受けている証拠

この一連の動きをデータで追っていくと、トップ−6.6cm→切り返し−11.1cm→インパクト+0.5cmとなり、切り返しからインパクトにかけての骨盤が上にどれだけ伸展したか? を表す「PELVIS LIFT(INTO IMPACT)」は、11.1cm+0.5cm=11.6cmとなります。この上下の動きのデータは切り返しにかけての骨盤が下がる距離、インパクトにかけての骨盤が上がる距離、どちらも非常に大きく、笹生選手は「バーチカル」と呼ばれる縦方向の力が大きいことを表しています。上下のバーチカルの力はうまく使えるとヘッドスピードを加速させることができます。方向性、効率、速度、笹生選手のそれぞれの秘訣がこの3つの特徴によく表れていますね。

今回は、笹生優花選手のドライバースウィングを分析させて頂きました。日本人初となるメジャー2勝目を挙げた笹生選手や2位に入った渋野選手など、今大会は日本人選手の活躍が光りました。笹生選手に続く日本人選手のメジャー優勝も、きっとそう遠くない日に実現すると期待したいですね!

AI分析のバックナンバーはこちら

もっと読みたい人はこちらをクリック

2024年全米女子オープン関連記事はこちら

笹生優花の飛ばしの秘密!? アマチュア時代の独占取材動画はこちらから

画像: 祝!全米女子オープン優勝!笹生優花の飛距離を支えるトレーニングに密着 www.youtube.com

祝!全米女子オープン優勝!笹生優花の飛距離を支えるトレーニングに密着

www.youtube.com

This article is a sponsored article by
''.