中学1年からイップスと闘い続けていた秀憲は、日々の練習のなかで試行錯誤していた。しかし自分の体に合う感覚と出合うことはなく時間が過ぎていった。20歳の頃にゴルフ以外とは別の角度からイップス脱出の糸口を見出そうと考えた。そして自分の体が置かれている状態を細かく分析すると、日常生活で体に力が入ってしまう姿勢で過ごしていたことが分かった。秀憲に当時から現在に至るまでの肉体とイップスの経過を紐解いてもらった。

日常生活の何気ない姿勢から見直した

「これはゴルフだけでどうにかなる問題じゃない」

ゴルフ以外の角度からアプローチをすることで別の道が開けると考えたのは20歳の時だった。改めてイップスで肉体に起こる反応を細かく分析した。症状は中学、高校、現在と小さい違いはあるけれど、1つの共通点があった。それは“全身が緊張する“点だった。どれだけ脱力することを意識してもインパクトの瞬間には全身が固まり、自分の意思ではコントロールが効かない状態になる。

全国大会で起きた自分のイメージとは異なるミスショットによって、恐怖心が芽生え、体が硬直する癖がついていた。秀憲はその緊張を解くために人間の肉体的な部分を知ることから始めた。自分が体を緊張させてしまうポジション、つまり自然と力んでしまう姿勢でゴルフをしていると考え、さらに深く掘り下げて日常生活での些細な動きから分析していった。

「まずは立ち方から変えてみよう」

普段の何気ない立ち姿勢から見直した。筋肉や骨の付き方にのっとった力みのないリラックスできるポジションを探した。解剖学を勉強したことで脛や大腿部、骨盤の位置を把握し、足の裏全体で体重が支えられるように練習した。

「それに気づくまではずっとつま先寄りで体重を支えていました。普段から勝手に力が入りやすい姿勢で過ごしていたんです」

日常生活から全身の力が入りやすい姿勢で過ごし、その積み重ねで体が硬直してしまう癖がインプットされていたと秀憲は仮説を立てた。日々の積み重ねから立ち姿勢で骨格に適した自然な体重バランスを身に付けることができた。

その次のステップは歩き方に焦点を当てた。

「本来歩く時は踵から接地するんですが、自分の場合はつま先を中心に地面をとらえていました」

歩く時も真逆の動きが秀憲には癖付いていた。正しい歩き方を覚えるために最初は意識的に踵からつま先へ重心が移動するように歩き、やがて無意識に歩けるようになった。静的な姿勢から始まり、歩くという動的なステップをクリアして体が過剰に力まなくて済むポジションをインプットした。

日常生活レベルの動きをマスターし、ゴルフで生かすことへ繋げた。具体的には「アドレスの足裏の体重の掛け方」を見直した。

これまではクラブを握りアドレスに入るとつま先側に重心が寄っていた。最初の姿勢で脱力をするために土踏まず辺りに体重を預けることを心掛けた。立ち方や歩き方と同様にこれまであった力みが段々と解れていくのを感じた。

ゴルフ以外の方法でイップス脱出の糸口を見出した秀憲は「何年間と長い単位で他の人よりも力が入りやすい姿勢で過ごしていたということは、言い換えると負荷を掛けて日常生活やゴルフをしていたことになります」と話す。

体が硬直せざるをえない状態でゴルフと向き合い、さらに試合のような精神的に緊張する場面でより力みが発生していた。最初は自分が気づかない程度だったものが蓄積されたことでイップスとなって形に現れた。

画像: ゴルフのアドレスで体が硬直しやすい姿勢だったことに気づき、骨格に合ったポジションを探し、イチから創り直した

ゴルフのアドレスで体が硬直しやすい姿勢だったことに気づき、骨格に合ったポジションを探し、イチから創り直した

「体にとって理にかなっていない動きをしていたことに気付かず、さらに力んで対処しようと若い時はしていましたね」

中学1年からイップスとの闘いが始まり、学生の頃はゴルフだけで解決策を探したが有効な手段がなかった。しかし様々な方法をやり尽くしたことで、方向転換をするきっかけになった。自分の肉体と向き合うことを始め、日常生活レベルで積み重ねたことで確実に前進していた。この新しい角度から試行錯誤した経験は秀憲の新しいゴルフの型を創る上でなくてはならないものだった。

【プロフィール】
伊澤秀憲(いざわひでのり)/1991年6月生まれ。神奈川県出身。叔父伊澤利光の父であり、祖父の利夫氏に2歳からゴルフの英才教育をうけながら、ジュニア時代は同世代の松山英樹、石川遼らとしのぎを削ってきた。YOUTUBEチャンネル「アンダーパーゴルフ倶楽部」にてショートゲームを中心とした動画を配信中!

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