地域に根ざした大衆的な中華料理店「町中華」にスポットが当たって久しいが、同じように地域に根ざしたゴルフショップといえば「ゴルフ工房」がある。経験豊かなクラフトマンが使い手の要望に合わせ、ヘッドとシャフトを組む「カスタムクラブ(地クラブ)」が人気だ。そこで、人気工房の「飛ぶスペック」を週イチで紹介! 試打者はゴルフダイジェストで四半世紀にわたり世に出たほぼすべてのクラブを打ってきた堀越良和プロだ。

川崎春花・笹生優花が愛用するシャフトブランドで組んだ1本

連載22回目は愛媛県松山市に工房を構える「ゴルフ30」の菅野實さんがおすすめする1本をご紹介。もともと電気業界に勤めていた菅野さんは、大手ゴルフクラブメーカーにて3年間ほど経験し、その後現在の工房をオープンした。菅野さんはクラフトマンの他、レッスン業なども行っている。ちなみに菅野さんが手掛けたクラブが以前行われた『週刊ゴルフダイジェスト』カスタムクラブドライバー選手権にて、2連覇を果たしている。

画像: 今回協力してくれた菅野さん

今回協力してくれた菅野さん

菅野さんに工房の強みを聞くと、「お客様の方向性と飛距離を伸ばすことができます。100人が100人同じスウィングではなく、身長の高低があり、手の長さがあるためその人に合うクラブを作ることが一番大事だと思っています。またクラブは1g変わっただけでもかなり変わるため、お客様とコミュニケーションを取りつつ、少しずつ好みのクラブに調整していきます。グリップ交換は気軽に試せますが、ものによって重さが異なるので極端に太いグリップを挿すとバランスが崩れてしまうこともあるため注意が必要です」と万人に合うクラブはないが、調整によって可能性を広げることができるという。また、「『お客様には10ヤード飛ばないと返金します』といつもお伝えしています(笑)。大体100人に購入して頂くと2~3人程度返金しているくらいの感覚でしょうか。常連さんに至っては私にクラブ作りを丸投げしてしてくる方もいます(笑)」と絶大な信頼感があることがわかる。「ゴルフ30」では練習場も併設されているため、試打を実際に見てもらいながら調整してもらうことが可能だ。

「イミドアンドサンズ製シャフトとMIRAI『KEYEK・R(10度)』がおすすめ」と菅野さん。「今回はちょっと上級者向け・ハードヒッター向けに作りました。このシャフトは独自の編み方をしているため、全体の負荷が一定で暴れにくいシャフトです。また、MIRAIのヘッドは一般のヘッドに比べ、スピン量がおおよそ500rpm弱減る設計です。右に逃げやすい所を、ヘッドの縦のミーリングをいれてつかまりやすくしています。フックが出にくい組み合わせなので、ドローヒッターと相性が良いと思います。最終的には4つのウェイト調整が可能なので、好みに近づけやすくカスタム性のあるクラブだと思います」と語る。

●ヘッド/MIRAI KEYEK・R(10度)

画像: MIRAI KEYEK・R(10度)

MIRAI KEYEK・R(10度)

超硬チタン合金を再構築した「DAT55G」を採用。マッドブラック超硬化&CPミーリング加工もプラスして安定した高次元反発の向上を図っている。また全個体CT値測定検品を行い適合最大クラス反発モデルを管理。ソール部に4カ所のウェイトを配し、プレイヤーに合わてヘッド重量や重心位置の調整が可能。価格(税込)/8万8000円(ヘッドのみ)

●シャフト/IMIDE AND SUNS(イミドアンドサンズ)

画像: IMIDE AND SUNS(イミドアンドサンズ)

IMIDE AND SUNS(イミドアンドサンズ)

様々なヘッドを分析した結果、ヘッドカテゴリを分類し、その情報をベースに軸となるシャフトを数十パターン作成。本来は打者のリクエストに合わせ、独自のオートクレープ製法で受注生産。注文してから作成するため、納期は約3週間程。詳細はイミドアンドサンズ直営店・販売店まで。オートクチュール・マトリクスの2通りからフィッティング可能。価格(税込)/13万2000円 ※詳細は公式HPへ

最近のカスタムヘッドの傾向は出っ刃?

ここからは堀越プロの試打結果とインプレッションをお届けしよう。

クラブを渡した瞬間に「グリップが細いですね! 球を操作したいゴルファーには良さそう」と初っ端から高評価。「あとシャフトのデザインとグリップのデザインを合わせているのもカッコよくて所有欲をかき立てられそう」という。「最近のカスタムクラブのヘッドは出っ刃のモデルが多いんですね、流行りなのかな? 前回、前々回も話しましたが、FP値(フェースプログレッション)の大きさは好き嫌いがあるので、好みの問題かと思いますが、私はこのヘッドからはつかまるイメージが湧きます。とはいえ、重心角を調べてみると、そこまで大きくはないので、細いグリップとも相まって、つかまえられるゴルファーだとつかまえることもできるモデルなのでしょう。上級者向けなイメージがありますね。(数回素振りをすると)振り心地もいいですし、ヘッドスピードが上がってしまいそうなイメージです。とはいえ、いつもどおりHS42m/s前後の力感で振っていきます」と堀越プロ。

画像: 試打者/ほりこし・よしかず。試打経験から裏打ちされた豊富な知識と試打技量から大手メーカーのシャフトやヘッドの開発にも携わる。キング・オブ・試打。クレアゴルフフィールド所属

試打者/ほりこし・よしかず。試打経験から裏打ちされた豊富な知識と試打技量から大手メーカーのシャフトやヘッドの開発にも携わる。キング・オブ・試打。クレアゴルフフィールド所属

画像: 弾道計測器は「ラプソード MLM2 PRO」を使用

弾道計測器は「ラプソード MLM2 PRO」を使用

早速、1球目を打つと打ち出し角が14.2度とやや抑えたボールが出た。この弾道を見て「ボールが強いですね。最近は少し高弾道になるモデルを打つことが多かったのですが、これは抑えの利いた強い球が出ます。やはり上級者向けなのでしょう」と堀越プロ。続いて2球目、3球目を打つと2500rpm前後を推移する。「この組み合わせなら極端な低スピンになるということはないと思います。この打ち出し角で低スピン過ぎるともしかしたら球が上がりきらず、ドロップとは言いませんが、飛距離ロスの可能性も出てきます。上級者になればなるほど気になるのはキャリー。この組み合わせはしっかりキャリーが出るクラブと言えるでしょう」という。次にあえてトウ寄りで打ってみると「オフセンターヒットでもボールスピードが60m/s以上出ているので、芯に当たらなくてもしっかり飛距離が出るモデルです。とはいえ、大慣性モーメントを狙っているヘッドではないので、寛容性が極端に強いということはありませんので、注意は必要です」(堀越)

なお、ヘッドスピード42m/s前後で5球を打っての平均は下記のとおり。

ボール初速●61.3m/s
打ち出し角●14.9度
スピン量●2595rpm
キャリー●228.3Y
総飛距離●247.6Y

総評

「つかまるんだけど、つかまり過ぎないヘッドとシャフトの組み合わせです。グリップが細いと握ったときに話しましたが、そもそもシャフトのバット(手元部分)が細いです。この部分が細いと自然とフックグリップになるので、つかまる印象を覚えたのだと思います。アドレスでヘッドを地面につけるとターゲットに対してしっかりスクエアに収まるので、据わりはかなり良く、構えやすいヘッドです。打音は高いけど、打感が軟らかいという何ともいえない不思議な感覚です。打音は慣れてしまえばいいですし、全体としてバランスがいいので、スコアを求めるゴルファーが試打すれば、かなり好かれる組み合わせではないでしょうか」(堀越)

画像: 総評

ゴルフ30

パーシモン時代からの技術と、現在の技術を組み合わせた老舗店。

画像: カスタムクラブなど、珍しいクラブを試せる

カスタムクラブなど、珍しいクラブを試せる

住所/愛媛県松山市高井町730-3 第一ゴルフガーデン内
営業時間/11:00~19:00
定休日/日曜日(臨時休業あり)
電話番号/089-970-5612

THANKS/クレアゴルフフィールド

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