自分もパーマーのように新しいゴルフ産業を創りたい
秀憲の言うとおりかもしれない。今から64年前にパーマーが実業家のマーク・マコーマックと握手をかわさなければ、お茶の間にゴルフを届けることができていなかったかもしれない。1958年のマスターズでメジャー初制覇をし、1960年にマスターズ2勝目を挙げた。そして彼の真骨頂だった果敢にピンを狙うアグレッシブなプレースタイルがファンを魅了した。
さらに当時アメリカの家庭でテレビの普及が進んでいたことも相まって、パーマーの認知度とゴルフが世間に知れ渡る絶好のタイミングだった。そしてマコーマックとの出会いでゴルフの地位を高めることができた。
それは現在もゴルフのみならず様々なプロスポーツ選手やアーティストが所属する「IMG」が設立され、その第一号にパーマーがいた。パーマーの活躍はテレビに取り上げられたことで、ゴルフ人気が加速していき、スポーツビジネスの始まりを創った。秀憲は現在のゴルフ界の原点であるパーマーへ畏敬の念を抱いていた。
写真は1969年のマスターズでのパーマー。選手として輝かしい成績を残しただけでなく、ゴルフを大衆に認知させた
「歴史を知った時にレベルが違うなと思いました。テレビであったりPGAツアーを創ったりとゴルフの地位を底上げしたことに凄さを感じました」と話した。だからこそ今の自分にもやらなければならない使命があると思っている。
「僕もゴルフに育ててもらって今があるので、何かしら恩返しをしないといけないなと常に思っています」。
自分が先人達から受け継いできた恩恵をゴルフ界に対して還元できないかと試行錯誤しており、時には仲間と協力して様々な取り組みを行ってきた。同世代の石川遼と話し合い、それぞれの立場で出来ることを模索している。
「遼は選手として競技で引っ張ってもらって、彼が競技で忙しく手が届かない部分は僕が取り組もうと。そしてお互いに協力出来ることがあったら力を合わせて出来ればいいなと思っています」。
自身がやっているYouTubeしかり、秀憲の現在の行動のすべてに行き着く先は、育ててくれたゴルフ界に対しての恩返しのためだった。
自分に出来ることを探し、行動している理由はゴルフ界への恩返しのためだった
そして秀憲が最終的に目指すところはパーマーが成し遂げたように、新しいゴルフ産業の仕組みを創ることを目標にしている。数多く思い描いている施策の中から1つ例を挙げてもらうと、プロを目指すゴルファーがゴルフを諦めずに人生を歩める仕組みづくりがある。
「誰しもがずっと競技で生活出来るとは限らないわけじゃないですか。特に経済的な問題で諦めざるを得ないことが多いんです」。
プロ志望のゴルファーにとって重大な問題のひとつは金銭面だ。試合のための経費や私生活など金銭的な問題とは隣り合わせで、次第に力をつけて軌道に乗ればスポンサーのような後ろ盾があり負担は軽くなる。
しかし結果が振るわない選手は捻出することが難しく諦めなければならない。その夢を少しでも長く続けられるように、競技を継続しながら生活できる仕組みを創りたいと考えている。
少子化が進みゴルフ人口が減少する可能性もある中で、未来のスター予備軍であるプロを目指す若いゴルファー達が環境に身を置けるように整備し、やがて活躍する姿を見た子ども達がゴルフを始めるきっかけになる可能性だってあるわけだ。
タイガーを見てゴルフにさらにのめり込んだ秀憲は、大人になり歴史を紐解いた先に辿り着いたパーマーの功績を知った。そして当たり前に触れているゴルフが受け継がれている伝統を重んじて、自分にできるゴルフ界への恩返しを胸に秘めて日々の活動に尽力している。
【プロフィール】
伊澤秀憲(いざわひでのり)/1991年6月生まれ。神奈川県出身。叔父伊澤利光の父であり、祖父の利夫氏に2歳からゴルフの英才教育をうけながら、ジュニア時代は同世代の松山英樹、石川遼らとしのぎを削ってきた。YOUTUBEチャンネル「アンダーパーゴルフ倶楽部」にてショートゲームを中心とした動画を配信中!
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