◉解説/内藤雄士
日大ゴルフ部在学時に米国に留学し、最新理論を学び帰国。プロコーチのパイオニアとして多くのプロを指導するほか、メディアでも活躍。今年の全英オープン中継でも解説陣の一角を担う(ゴルフネットワーク、U-NEXTで中継)
日の出から日没まで時間が長い全英オープン
日の出から日没までの時間が長く、時間の変化とともに刻々とコースも表情を変える全英オープン。とくにスコットランドのコースは雨、風、気温の変化が激しく、「一日のなかに四季がある」と言われるように、スタートする時間によって選手たちの攻略方法も変わってくる。
ロイヤルトゥルーンGCで開催された16年大会に出場した塚田陽亮は、「僕は初日、ワクワクしすぎて眠れなくて、スタート時間の9時間半前に目が覚めてしまったんです。それでテレビをつけて、他の選手のプレーを見ながら、イメージを膨らませていたんですが、いざティーイングエリアに立つと、風も気温もテレビで見ていたのとまったく違う。せっかく予習したのに全然参考になりませんでした(笑)」。
「最初の5ホールでスコアを伸ばさないと、あとは耐えるだけの厳しいコースで、正直必死すぎて後半はほとんど覚えていない。初日と2日目でスタート時間にかなり違いがあって、2日間で全く違うコースに感じました。でも8番と11番は印象に残っています。8番は海方向からアゲンストが吹いていて、クラブの選択に頭を悩ませたし、11番はティーイングエリアからフェアウェイを見ると、本当に狙いどころが手のひらサイズの範囲に見えて、メチャクチャ狭くて難しかったのを覚えています」(塚田)
注目ホール
【ポステージスタンプ】
全英オープン開催コースの中でも、もっとも短い距離のパー3。しかし、ティーイングエリアから見た時に小さなグリーンがポステージスタンプ=切手のように小さく見えることからその名前が付けられている。そのグリーンの四方を深いバンカーが囲み、アゲンストの海風が吹き付ける。天候次第で持つ番手が大きく変わってくる難ホール。
◇8番ホールにまつわる豆知識◇
1878年にウィリー・ファーニーにより設計され、後にジェームズ・ブレイドにより改修された8番ホールは、元々、ティーイングエリアから見渡せる岩の島にちなんで「アイルサ」と呼ばれていた。しかし後年、ウィリー・パークが「ゴルフイラストレイテッド」誌に「グリーンは郵便切手の大きさ」と書き記していたため「ポステージスタンプ(郵便切手)」という名に変えられた。1950年の全英オープンではドイツのアマチュア選手が第1打をバンカーに打ち込み、2打目以降、グリーンを挟んでバンカーを行ったり来たり。12打目でようやくグリーンオン、スリーパットで15打を要した。これは全英オープン史上、最多打数記録となっている。
前回大会の解説も務めた内藤雄士プロコーチは海外メジャー特有の厳しさも指摘。
「世界ランクの上位など有力選手は、“いい時間帯” を割り当てられることが多いのに対して、そうでない選手は空きの時間帯に振り分けられる。そのため、スタート時間による運・不運の影響をモロに受けてしまう。基本的にはこれぞリンクス、というコースで、かなり手前からパターで長い距離を転がしたり、フェアウェイのデューンで変なキックをしたりと、見ていても地味な玄人向けのゴルフが展開されます」
「正直、誰が勝つのかやってみるまで予想がつきませんが、前回優勝したヘンリク・ステンソンはドライバーをほとんど使わずに優勝したように、ドライバーでガンガン攻めていくというよりは、正確にコースをとらえて2打目以降に正確にピンを狙える選手が有利。その意味でも、日本人選手にとっては、全英オープンのなかでは比較的やりやすいコースだと思うので、成績にも期待したいですね」(内藤)
注目ホール
【レイルウェイ】
ティーイングエリアからフェアウェイの間にハリエニシダのブッシュが広がり、ホールのすぐ右側は鉄道が走りOB。落としどころがかなり狭く見え、加えて強烈なアゲンストの風が吹くため、飛距離と正確性が要求される。コースでもっとも難度が高く、少しでもミスをすると大きくスコアを崩すことになりかねない。
PHOTO/Getty Images
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内藤雄士プロコーチが選ぶ、全英オープンの注目選手は2024年7月30日号「週刊ゴルフダイジェスト」かMyゴルフダイジェストにてチェックをお願いします!