比較的穏やかなコンディションだった午前から一転、午後遅い時間になるほど全英オープンの舞台、ロイヤルトゥルーンが牙を剥き2日目まで好調にスコアを伸ばしてきたシェーン・ローリーが6つスコアを落とし9位に後退。混戦に拍車がかかるなか6位からスタートした14年の米ツアー年間王者ビリー・ホーシェルが通算4アンダーとし後続に1打差をつけ単独トップに躍り出た。
画像: 「これぞリンクス!」という環境のなか、トップに躍り出たビリー・ホーシェル(撮影/姉崎正)

「これぞリンクス!」という環境のなか、トップに躍り出たビリー・ホーシェル(撮影/姉崎正)

3日目を終えアンダーパーはわずか9名。上位がスタートし始める午後3時過ぎから雨が激しさを増し風はなかったものの凍えるような冷たい雨が瞬く間に選手たちをびしょ濡れにした。

悪天候には慣れているはずのローリー(アイランド出身)がミスショットに怒って悪態をつく。風はなくても空気が重く厳しい寒さが苛立ちに拍車をかけた。

他の選手も同じように苦しんだ。1打差の2位タイにつけ優勝戦線に踏みとどまったローズも「こんなにタフなコンディションはあまり経験したことがない」。松山英樹も後半耐え切れず5つボギーを叩いた。

画像: このコンディションに対して何かいいたげなジャスティン・ローズ。1打差2位タイで最終日を迎える(撮影/姉崎正)

このコンディションに対して何かいいたげなジャスティン・ローズ。1打差2位タイで最終日を迎える(撮影/姉崎正)

しかしこの日2つスコアを伸ばし単独トップに立った37歳のホーシェルはリンクスが用意した厳しい試練に耐え抜いた。

13番は478ヤードと普通なら2打目をショートアイアンで狙える距離。ところがこの日ホーシェルは2打目がグリーンに届かず70ヤードのアプローチを残すことに。しかしこのピンチにアゲンストの風に対応した絶妙なショットで3メートル弱に寄せパーをセーブ。これが本人にとってこの日のハイライト。

「あのアプローチが一番納得のいくショットでした」

画像: 悪天候のなか、失敗を恐れず自分のゴルフを徹底したホーシェル(撮影/姉崎正)

悪天候のなか、失敗を恐れず自分のゴルフを徹底したホーシェル(撮影/姉崎正)

終盤さらに強風も加わりホーシェルは17番238ヤードのパー3でドライバーを打った。普段300ヤード以上飛ばす選手がドライバーを持つという選択を強いられるほど苛酷な状況だった。

これまでに米ツアー8勝を挙げ年間王者のタイトルを持ち、ヨーロッパでも何度か優勝を経験しているが、なぜかメジャーとは相性が悪く42回の出場でトップ10入りはわずか2回。全英オープンには9回の出場で予選突破は3回だけ。最高成績は2年前の21位タイと平凡なもの。

「メジャーは私にとってとても大切です。ここ(メジャーでのリーダーボードのトップ)にたどり着くために一生をかけて努力してきました。明日が私の日なら大喜びするでしょう。私の日ではなかったら再び懸命に前を向いて再びこの位置に戻れるよう努力するだけです。失敗は恐れません」

「ここにいられてワクワクしています。ずっとここにいたいです!」と心躍らせるベテラン。

「毎晩寝る前に自分がトロフィーを持っている姿をイメージする」というホーシェルは最終日の前夜「18番の大観衆の前でトロフィーを掲げ皆に祝福されることを想像しながら」眠りに就いた。

ゴルフという浮き沈みの激しい世界で、喜びを苦しみを嫌というほど経験してきた男は「レガシーを作りたい」と切に願っている。

※2024年7月21日13時24分、一部加筆修正しました。

コラム著者・川野美佳が執筆する「レジェンドたちの全英オープン」

This article is a sponsored article by
''.