ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は全英オープンで2位だったグッドルーザーのジャスティン・ローズについて語ってもらった。
画像: 全英オープンで優勝したザンダー・シャウフェレをハグする2位のジャスティン・ローズ(撮影/姉崎正)

全英オープンで優勝したザンダー・シャウフェレをハグする2位のジャスティン・ローズ(撮影/姉崎正)

第152回の全英オープンは、優勝したザンダー・シャウフェレを取り上げるべきでしょうが、今回は惜しくも2位に終わったグッドルーザー、ジャスティン・ローズについてお話しします。

ローズにとって全英オープンは、キャリアのスタートとも言える大会。マーク・オメーラが優勝した98年大会、4位でローアマとなり、可愛い笑顔と最終ホールでのガッツポーズとともにセンセーショナルな世界デビューを果たしました。

大会終了後、18歳の誕生日を目前にプロ転向。しかし、世界的な注目が大きな負担だったのかもしれません。21試合連続予選落ちというほぼ丸1年にわたる苦しい時期を過ごしました。

普通の選手であればこれで消えていってもおかしくない、プロの世界の洗礼です。しかしローズは02年に生まれ故郷の南アフリカで欧州ツアー初勝利。この年、中日クラウンズにも勝ちました。

07年には欧州ツアーの王者に輝き、10年にはPGAツアー初勝利。そして13年には全米オープンでメジャー制覇、16年はリオ五輪で金メダリストに。17年のマスターズではセルヒオ・ガルシアとのプレーオフで敗れますが、18年にはPGAの年間王者となり、世界ランキング1位にも輝きました。

そんな誰もが羨ましがるキャリアを積んだ43歳が今回、最終予選会を勝ち抜いて全英オープンに出場してきたのです。母国のナショナルオープンの重さ、そして何より勝ちたい思いが伝わります。

それはローズのプレーにも表れていました。リンクス特有の気まぐれな天候で、ワンウェイでスタート時間が長時間となり、どうしても運不運が試合展開に影響します。

それもゴルフと言ってしまえばそれまでですが、予選ラウンドで初日・2日目が午前・午後の組は、午後・午前組に比べ、1人平均2.30ストロークの差があったというデータも。不利なサイドでトップ10にいたのはローズ1人だけでした。

また3日目は遅い組ほど大変な天気になり、ラス前と最終組がスコアを崩し大混戦に。そんな厳しい環境のなか、粘り強いゴルフで厳しいパットを沈め続けたのがローズでした。3日目の最終ホールで、微妙なラインと距離のパーパットを沈めると、思わず出た雄たけびとガッツポーズは、子どもの頃から夢見ていた母国のナショナルオープンへの思いの強さが出たのかもしれません。

ちなみに最終日、ローズが身に着けたのは、98年の全英でローアマとなった時、18年に年間王者となった時と同じエンジ色のシャツでした。最終日も粘り強いいいゴルフでした。

ただ、ザンダーのゴルフはほとんどミスのない完璧なもの。このザンダーを称えるローズの姿は、17年のマスターズでガルシアに敗れたときと同様のグッドルーザーぶりでした。試合後、ローズはSNSにこんな投稿をしています。

ザンダーへの祝辞、そのゴルフを称賛するとともに、「自分も精いっぱい戦った。そこに悔いはないし、誇りに思っている。そしてクラレットジャグ(全英の優勝カップ)への夢はまだ続いている」。

ボクはローズをまた好きになりました。

メダリストたちの戦い

This article is a sponsored article by
''.