セベ・バレステロス(Ballesteros)を筆頭に多くのメジャーチャンピオンを輩出してきたスペインだが、全米アマ制覇はゼロ。だが今回、スペインの新星が自らの誕生日(8月18日)にアマチュア最高峰の大会でビッグタイトルを射止めた。
36ホールの決勝マッチの相手は、世界アマランキング560位の伏兵ノア・ケント(米)。
ミネソタ州ヘイゼルティンの開催コースを訪れたギャラリーの9割が彼の応援に回り、バレスターは完全アウェイ状態での戦いとなった。
最後の9ホールを4アップで迎え優勢だったがケントが終盤激しく追い上げ、決着は18番にもつれ込んだ。そこでバレスターはジョン・ラームを彷彿とさせる完璧なティーショットでフェアウェイ中央をとらえ、第2打はバーディチャンス。
相手がミスを重ねると彼はキャディと抱き合いながらグリーンに歩を進め、「この最後の歩みを楽しもうと声をかけあったんだ」。
アマチュアの世界ランクは10位だが、カレッジでの優勝はない。しかしオールアメリカンには3度選ばれており、「何かきっかけがあれば大化けする逸材」と大学の監督も期待を寄せていた。
「スペインには伝説に残る選手が大勢います。その歴史に僕の名を加えることができたのがうれしい。まだ現実をのみ込めていません」とバレスター。
決勝マッチの前夜、ホテルで寿司を食べ卓球を楽しみ、憧れの先輩セルヒオ・ガルシアと電話で話した。大会中もメールをやり取りし、「自分らしくあり続けることが一番大事」とアドバイスを受けた。終盤の逆境にもこの言葉が浮かび、自分らしいプレーでアウェイのギャラリーを黙らせた。
ガルシアは、憧れの人セベの誕生日にマスターズを制した。誕生日Vを果たしたバレスターにもいつかそんな日が訪れるかもしれない。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年9月10日号「バック9」より