リディア・コー
1997年4月24日生まれ。27歳。ソウル出身。5歳でゴルフを始め、6歳でニュージーランドに移住。2012年には、当時最年少の14歳10カ月で豪州女子ツアー優勝。同年に15歳で米女子ツアー最年少優勝。米女子ツアー通算21勝、メジャ―3勝。
解説:斎藤大介プロトレーナー
柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持ち、ヨガのRYT 200も保持。2015年より米女子ツアーの選手トレーナーを務め、 2020~2022年は渋野日向子の専属トレーナーとして活躍。現在、国内外の選手をサポートしている。週刊ゴルフダイジェストで「らくらくゴルヨガ」を連載中。
リディアの強さの秘密は“体の使い方”にあった
今年のパリ五輪で金メダルに輝き、続く全英女子オープンでも逆転優勝を遂げ、一気に殿堂入りを決めたリディア・コー。そのリディアをよく知る斎藤トレーナーは、現地セントアンドリュースでリディアのプレーを見ていた。
「リディアのトレーナーになったきっかけは、2015年から米LPGAツアーの選手たちのトレーナーをしていたんですが、選手たちからの紹介もあり、リディアのほうから声を掛けてくれました。リディアの性格はすごく質素な感じで、成績が良くても悪くても全然動じないアップダウンがないタイプの選手です。試合中であっても普段と変わらない冷静さを保てる。これがリディアの凄さです。ゴルフには基本的にストイックなんですが、朝から晩まで一日中練習をするよりも自分でスケジュールを決めて、そのなかで取り組んでいくめちゃくちゃ効率がいいタイプ。短い時間での練習を最大効率で取り組むタイプの選手なんです。
あと、リディアは基本的に体の使い方が上手いんです。飛び抜けてフィジカルが強かったり、すごく飛ばせるわけではなく、リディアの強みは体を意のままに動かせることです。リディアは、『体の状態を言語化すること』が上手いのですが、こんなに自分の体の状態を言語化できる選手はなかなかいないと思います。言語化が上手い選手は数少ないですし、言語化できるとスウィングの再現性の高さに繋がると思います」(斎藤トレーナー)
自分の調子を客観的に分析できることはスウィングの再現力の高さにも繋がる。動きを分析できてすぐに理解できる。そしてイメージした動きがすぐにできるのだ。斎藤トレーナーにはケアのときも体の状態を細かく伝えていた。
「体調をアジャストするのって一流の条件だと思うんですけど、リディアは練習の前に『今日はこの辺の筋肉が抜けているからここを締めてくれたらスウィングにキレが出る』など、体の状態を詳細に伝えてくれます。人よりも力もないし、飛ばせるわけでもないですが、体の調子を冷静に分析できる力とその分析を活かす力はすごく高いと思います」
さらに、斎藤トレーナーが挙げるリディアの強さの秘密は、27歳とは思えない「豊富な経験」だと言う。10代から世界のトップで活躍し続けてきたリディアの経験が、セントアンドリュースの強風にも怯むことなく冷静に対処できた要因なのだろう。
16歳でプロ転向し、18歳で「エビアン選手権」と「ANAインスピレーション」の2つのメジャーを制し、2016年のリオ五輪では銀メダルを獲得。東京オリンピックでは銅、パリ五輪では見事金メダルを取り、金、銀、銅3種類のオリンピックのメダル保持者となった。リディアがこうした数々の試合でタイトルを獲得できたのは、リディアの大舞台に合わせられる調整力の高さゆえだ。そして、その調整力を支えているのは、「リディアの家族」の存在が大きいと斎藤トレーナーは言う。
「リディアは、10代からツアーに参加しているので、いつも母とマネジャーで姉のスラ・コーさんとともに海外遠征しているんです。米LPGAの試合の朝食では、洋食かその地域の料理から選べるビュッフェを食べることができます。しかし、リディアはいつもホテルではなく、キッチン付きの部屋に滞在して、お母さんが韓国料理を作っていました。いつも韓国料理を食べられるのは、海外の試合での調整力の高さにも繋がるのではないでしょうか」(斎藤トレーナー)
小さい頃からのこうした家族のサポートが、大舞台に強いリディアの原動力になったのだ。
PHOTO/Tadashi Anezaki、本人提供、Getty Images、Blue Sky Photos
※週刊ゴルフダイジェスト2024年10月1日号「リディア・コー 強さの秘密」より