ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、世界7位でさらに強さを増している松山英樹選手の「すごさ」について語ってもらった。
画像: ツアー会場では、松山英樹がトップ選手やキャディ、コーチらにアドバイスを求める姿がよく見られるという(PHOTO/Blue Sky Photos)

ツアー会場では、松山英樹がトップ選手やキャディ、コーチらにアドバイスを求める姿がよく見られるという(PHOTO/Blue Sky Photos)

今年の1月時点では世界ランクは50位台だった松山英樹選手。13年全米オープン後に初めてトップ50入りしてから今年のソニーオープンまで10年以上トップ50内に居続けたすごさを忘れたかのように、昨季最終戦のツアー選手権に10年連続出場が果たせず、「どうした松山」という心ない言葉まで聞こえてきたものです。

ところが蓋を開けるとシーズン2勝にパリ五輪での銅メダル、最終戦にもカムバックし、フェデックスランクは16-17年の8位に次ぐ9位タイ。現時点で世界ランクも7位に。改めて松山英樹のすごさを実感したシーズンとなりました。

練習場でYouTubeを覗き、雑誌を読み、やたらと他人にアドバイスを求める人に上手いゴルファーはいない気がしますが松山くんは例外です。

象徴的なのがパリ五輪の練習ラウンド。9番のパー5は細長のグリーンで、いろいろなアプローチが求められる状況。時間をかけ入念に練習するのは当然ですが、半端なく難しいところなので何度か打ってもなかなか寄せられず、丸山(茂樹)プロに「ちょっと打ってみてくださいよ」という感じで言うと丸山プロは1回で近くに寄せたため、その後どう打ったのか事細かく聞いていました。

世界のマツヤマに今さら身につける新しい技術などあるのか、明日が初日という段階で、あれだけの世界ランク上位者が、いくら相手が丸山プロとはいえ、技術的なことを聞いてそれをいろいろ試している光景に新鮮というか不思議な感じが。

五輪前日でも隙あらば新たな技術を会得してやろうという貪欲さがすごい。セントジュード選手権でも最終日、解説で放送席にいたパッティングの名手のブラッド・ファクソンが、こんなエピソードを。

3日目を終えトップに立った松山くんが、練習グリーンで彼にアドバイスを求めてきたと。3日目を終えて首位、ましてこの試合、ストロークゲインドパッティングも1位の選手に、ファクソンもアドバイスしようもなく「ヒデキのアドレスはラインがいつも整っていていいね」と適当に言葉を濁したとか。

またフィル・ミケルソンのキャディを長く務め、最近はラウンドレポーターもやっているボーンズことジム・マッカイも、ある試合で松山くんのラインを切れると読み、放送で口にしました。それを外した松山くんは、「どうして切れると読めたのか」、スタッフをボーンズの元に走らせたそうです。

ほかにも、17年に世界ランク4位の松山くんがバミューダ芝でのアプローチのアドバイスを求めたのが、ツアーわずか1勝のウィリアム・マクガード。コブラの5番ウッドはケビン・チャペルが使っていたものを取り寄せ、兼本貴司のハイドローを見て動画を撮ったり、飛距離アップのためにドラコン選手と練習したり……、多くのエピソードがあります。情報が増えれば悩みも増え、進むべき道を見失いがち。一般に強くなれない人の理由はここにあります。

しかし松山くんの場合、アンテナは360度張り巡らされ、取捨選択能力も卓越しているのでしょう。

ストイックな貪欲さと練習量に支えられた孤高の職人魂が、世界のファンには「日本のサムライ」と映るのかもしれません。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年10月8日号「さとうの目」より

さすが松山! プレジデンツカップでも大活躍

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