実際のグリーン面をVR上に投影するパッティング練習法
練習日、青木は”黒いブツ”を頭につけてパッティング練習に励んでいた。ボールを打つだけでなく、頭を起こしては目の前の”何もない空間”に差し出した指を左右上下に動かしている。回りで練習するプロたちも”あれは何?”と気にしていた。
その“ブツ”は「パットビューX」というVRの練習器具。パッティング練習する際に頭に装着するヘッドセットだった。
「セレナさん、何やっているんですか?」(臼井麗香&安田祐香)
「これでパットの練習できるの!」(青木)
そんなやり取りをしていた青木に何をしているのか聞いてみた。
「私がやっているのはVRのパッティング練習法です。練習マットやティーを差してラインを作る練習と違って、ボールとラインに集中できるんです」
実際にボールを打つグリーン面の地形データを3Dでスキャニングし、そのデータを元に読み取って作成した傾斜などの情報を、VR上(目に映る画面)に投影して行うパッティングトレーニングシステム。タブレットのようにスクロールやクリックなどを指で画面操作するものだ。
青木が空間で指を動かしていた仕草はまさにそれだった。
このVR上のパッティングトレーニングシステムでは、カップまでの正確なラインを描いたり、あらかじめセットしたアドレスの姿勢やスタンス幅、ボール位置などをチェックしたりと、一般的に行われているパッティング練習法のほとんどを、画面ひとつでできる。練習用のマットやパター定規など、わざわざ持ち込まなくてもVRひとつで“すべて”まかなえるという。
最終日の9バーディにその練習の効果が表れた。
「ラインへの打ち出しやスピード感が『パッティングビュー』みたいな感じで打ててるねと、コーチ(大西翔太キャディ)と回りながら話していたほどです」
前半の5連続バーディは、3番6m(上りのストレートライン)、4番50cm、5番2m(下りのストレートライン)、6番2m(下りのフックライン)、7番2.5m(フックライン)。18番では、3mの下りのフックラインをねじ込んでみせた。
今週、遅めのグリーンでタッチに苦しむ選手がいたなかで、長い距離も短い距離も、難しい傾斜も、速さにも対応することができた。
さながら映画「ミッションインポッシブル」のような練習システムでパットが開眼した青木。VRの近未来な世界はゴルフ界にも、広まっている。