世界のゴルフ場を巡った好事家かが驚愕したコースが、南オーストラリアに眠っていた。JGAゴルフミュージアム参与、R&A会員の武居振一氏は世界を股にかけて380カ所のコースを堪能してきた。その経験豊かな氏がまだ知らない"奇跡のリンクス"が、豪州南西部に位置するロイヤルアデレードGCだった。以下は武居氏のレポート。
画像: コースのど真ん中を列車が走り去る光景は度肝を抜かれた

コースのど真ん中を列車が走り去る光景は度肝を抜かれた

誘ってくれたのはR&A現キャプテン氏。アデレード空港から20分、海岸から2㎞の西部郊外シートンに位置する。同GC設立は1892年。そして現設計は世界設計界の頂点の一人、アリスター・マッケンジー。彼は、1926年にロイヤルメルボルンGC設計依頼に応える途中で、アデレードに4日間立ち寄っている。敷地を二分するグランジからアデレードへの路線が電化される予定だったため、プレールートの変更を依頼されたのだ。

まず第一の驚きは、その電車が15分おきにコースのど真ん中を猛スピードで走り去る光景だった。ボールが線路の中に入ったら「無罰でドロップ。列車にひかれないために線路では打たないこと」と、キャプテン氏は事もなげにいうのである。もう一つの驚きは1番ホールのティーが18番グリーンのそばにあったこと。これは列車を通すためのマッケンジーのアイデアであった。日本では絶対ありえない1番ホールだ。

大戦中、ロンドン郊外のゴルフで「爆撃によって動かされた球は近いところにプレース」というしゃれたルールを思い出した。危険を顧みないゴルファー魂!?それからの驚きはマッケンジーの手腕の巧みさにあった。コース設計はまるでパズルゲーム。荒涼とした自然の大地になるだけ原形を残しながらホールのルーティングをはめ込む。その時に湧き出るインスピレーションと、アドリブ的発想力。同GC3番はまさにその発想を具現化していた。

マッケンジーが手がけたラヒンチGCやオールドコースのような雄大さはないが、狭いフェアウェイから醸し出される情景、松林で囲まれた小さなグリーンの静寂さには胸を突かれる。10番、クラシックな科罰型デザイン。砂丘に囲まれた11番はまるでパインバレーGCだった。ティーからフェアウェイが見えるだけ。グリーンはそこから低いハーローに横たわる。グリーン周りはまるで古代の円形劇場のごとき砂丘。100年もの間、全く手を加えていないという。

30年以上、リンクス巡りをしているが、やっと巡りあえた感慨に包まれた。

※週刊ゴルフダイジェスト2025年5月6日号「バック9」より

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