カーボンか、スチールか、どっちにしよう?
GD 今日は横浜市金沢区にある「日本シャフト」にお邪魔しています。目的は『N.S.PRO 950GH』(以下、NS950)に代わる次のシャフト探しです。軽量スチールシャフトの代表である『NS950』も気が付けば登場から30年近くなり、それに合わせてユーザーの年齢も高くなりました。
「NS950世代」がクラブを軽くしようと思ったとき、選択肢に上がるのが同じ日本シャフトの『N.S.PRO 850GH』(以下、NS850)、『N.S.PRO 850GH neo』(以下、850ネオ)、『N.S.PRO Zelos8』(以下、ゼロス8)になると思います。今日は、この3銘柄のシャフトを打ち比べてみたいと思います。
長谷部 『NS950』は歴史が長く、「日本シャフト」起始回生の軽量シャフトとして日本の市場に定着したものです。特に「ゼクシオ」をはじめとするアベレージクラスのスチールシャフトとしては本当に画期的なシャフトだったので、軽量シャフトの代名詞になっていきました。そのためユーザーも多く、そのユーザーが年齢を重ねた中での80グラム台のスチールシャフト選びには興味を持っています。
GD そうでしたね、思い出しました。『NS950』の普及に初代ゼクシオはけっこう貢献していました。『NS950』が装着された初代ゼクシオが出合いだったかもしれません。
長谷部 当時は「ツアーステージVシリーズ」と「ゼクシオ」、「テーラーメイド」に『NS950』が採用されていましたので、スチールシャフト市場の結構なシェアを占めていたんじゃないかと思います。
GD ゼクシオ人気に合わせて『NS950』も広まって、その後、ほぼすべてのメーカーが軽量スチールカテゴリーにおいては『NS950』を採用する流れがありました。
長谷部 当時、カーボンシャフトが広く受け入れられるようになり、「ダイナミックゴール」が合わない人々は軽量のカーボンシャフトに移行しました。その結果、一時期、軽量カテゴリーの市場シェアの約7割がカーボンシャフトとなりました。
そこに登場したのが『NS950』で、スチールシャフトが復権しました。いわゆるプロ仕様の「ダイナミックゴールド」に代わる軽量スチールシャフトのスタンダードとして、『NS950』が広まっていっていきました。
GD 『NS950』と出合い、その後ずっと『NS950』を使ってきたというゴルファーも多いと思います。私もそのひとりですが、最近、『NS950』に重さを感じるようになりました。そうなると、一番に考えるのが10グラム軽いスチールシャフトにするか、カーボンシャフトにするか。そこで迷われている人も多いと思うんですよ。
長谷部 そうですね。実は自分もそのひとりだった時期があります。40歳を前にしてクラブ全体を軽量化したいと思った時に、ドライバーとか、フェアウェイウッドは簡単だったんですけど、アイアンに関してはセット物なのですごく迷いました。結果的にはカーボンシャフトを選択したんですけど、その理由はスチールシャフトのバリエーションが少なかったからです。
今は選択肢も増え、総重量を軽くすることが目的なら8シリーズの『NS850』、『850ネオ』、『ゼロス8』の3つから選べるので、カーボンシャフトにいかず、スチールシャフトを使い続けることが可能になりました。
GD 『NS850』は以前から存在していて、女子プロゴルファーから非常に高い評価を得ているシャフトですが、『850ネオ』と『ゼロス8』はどんな特徴があるんですか?
長谷部 『NS850』は、『NS950』より手元の剛性を少し軟らかくしたり、強度や硬さを持たせるためにステップの形状を変えたり、いろいろな工夫が施されています。開発の方に話を伺ったことがありますけど、非常に苦心されて作り上げたのが『NS850』で、女子プロの世界で長く『NS950』に代わるシャフトとして愛用されているという背景があります。『NS850』はそういった意味でも、80グラム台のスチールシャフトの「完成形」と言えると思います。
GD そこから『850ネオ』に派生して、『ゼロス8』と種類が増えていきましたが、『NS850』と『850ネオ』は何が違うんですか? 『NS850』の後継のように見えます。
長谷部 従来の『NS850』を踏襲しつつ、流行りのストロングロフトアイアンを意識して作られたのが、『850ネオ』ですね。従来の『NS850』より先から中間の剛性が緩やかになり、ボールが上がりやすくなっています。
GD 『ゼロス8』は?
長谷部 『ゼロス8』はですね、『NS750』、『750ネオ』というさらに軽いスチールシャフトがありますけど、『NS950』の流れで軽さを限界まで作ることを目的としたものとはまったく別で、材料から見直してスチールシャフトの世界最軽量を目指したのが「ゼロスシリーズ」だと聞いています。
今までの『NS950』の流れのスチールシャフトの限界が『NS750』だとすると、「ゼロス」はまったく違うアプローチでシャフトの強度を出しながら、特性の違うシャフトはできないかというところでスタートしているので、素材だけでなく、今まで我々が認識している『NS950』とか、他の日本シャフトのスチールシャフトの流れとは別系統のものだと理解した方がいいですね。