寛容性が高いのに強い球。「GT1」の9度、ちょっと面白い

左から、阿久津未来也、米澤蓮、勝俣陵。ドライバーはいずれもGT1のロフト9度を愛用する
ツアー取材では、阿久津未来也、米澤蓮、勝俣陵といったプロが、いずれもGT1のドライバーを愛用していた。共通しているのは、「適度にスピンが入って弾道が安定。キャリーも伸びて飛ぶ」という感想だ。シャフトのカスタマイズなどは当然しているが、シリーズの中で最も寛容性が高く、軽量のモデルを男子プロが使うというのは、他のメーカーにはないタイトリストだけの現象と言っていいだろう。

内海大祐。ゴルファーの個性を生かした分かりやすいレッスンが好評。試打経験も豊富で、ギアの違いをつかむ感性に優れる。オールデイゴルフ馬橋 所属
今回検証試打を担当した内海プロは、まずGT1のヘッド形状に着目した。
「ヘッドの後方がストレッチして安心感があります。ボールが上がってキャリーが伸びそうな印象です。そして、GT2と比べると丸みが抑えられて少しスクエア感のある四角い顔。意外とここはポイントです」

GT1ドライバー。軽量設計でヘッドスピードがアップ。楽に高弾道が打てる設計になっている

GT2ドライバー。圧倒的な高初速性能と寛容性を両立。ツアーでも高い使用率を誇る
やや四角い雰囲気のあるヘッド形状は、テークバックでもダウンスウィングでも、無意識にターゲットに対してヘッドを真っすぐ動かしたくなるのだという。
「仮にダウンスウィングでインサイドからの軌道が強い人の場合、スクエア感の強いヘッドがそれを弱める可能性が高いです。フック回転が収まるので結果的にスピン量も確保されやすくなるでしょう」
ヘッド形状がスウィング軌道に影響を与え、その結果弾道に変化を及ぼすというのは、興味深い考察だ。では試打でGT1の性能を明らかにしよう。
最初にGT1ドライバー、ロフト10度のものから内海プロに打ってもらった。

使用球は「プロV1x」、HSは約42m/sでテスト。各クラブナイスショット3球以上を計測(計測器:MirakuVX)
「打感はソフトで本当に気持ちいい。このフェースにくっつく感じは、好きな人が結構多いと思います。スクエア感の強い形状、かつフェースアングルもスクエアなので、寛容性の高いモデルにありがちなつかまる雰囲気はあまり感じないのですが、打ってみるときれいなドローボール。でもつかまりすぎる感じはないので、左への不安もない。そして、使用する男子プロが言うように、適度にスピンが入って弾道は極めて安定します。ヘッドが軽めでかなりスピーディに振れるので、ヘッドスピードを40m/s程度で試そうと思ったのですが、自然と42m/sぐらい出てしまいました」
実は、GT1のドライバーを使う男子プロのほとんどは、GT2の10度や11度からのチェンジ。そしてロフト9度のものを選んでいる。
そこで内海プロに、GT1の9度、そしてGT2の10度を打ち比べてもらうことにした。よりヘッドの性能を比較できるように、シャフトはDANALI RED(50g台)のフレックスSで統一。
「9度でもGT1は、アドレスでフェース面がしっかり見えるので、“ロフトが立ってるな”というような圧迫感はありません。でも打ってみると、(GT1の)10度と弾道は違いますね。ボールのつかまりが抑えられて、球も強くなります。GT1なのでボールが上がらないことはない、でも上がりすぎることもない。そしてスイートエリアの広さも感じます」
続いてGT2ドライバーも打ってもらった。ちなみにGT2ドライバーは、月刊ゴルフダイジェストの名物企画「D-1グランプリ」で、今年“史上初の連覇”を達成した今一番飛ぶドライバーでもある。

やさしさは十分。振ってもスピンが増えずに前に飛ぶ印象のGT2
「GT2も芯が広くて、やさしさを十分感じられるヘッドです。ただGT1と比べると、印象としては少し振りたくなる、叩きたくなるヘッドです。ヘッド重量もGT1より重いので、質量によって出球の勢いが強くなる感じはあります。ショットデータ的には、ロフトが1度大きくても、GT2のほうがスピン量はやや少ないことがわかりました。GT2の10度よりもう少しスピン量が欲しいと感じるプロにとっては、GT1の9度がドンピシャはまるのが頷けます」
GT1は、ロフト9度、10度の他に12度もラインナップ。ロフトやシャフト次第で、確かに幅広いプレーヤーにマッチする、と内海プロ。
「GT1は、芯の広さに加え、球の上がりやすさ、適度なスピン量による大きなキャリー、直進安定性が基本性能。大きいロフトで純正シャフトの“AIR SPEEDER”ならやさしさ満点ですし、9度を選んでシャフトもしっかりしたものにすれば、そこに球の強さも加わる。懐の広いドライバーですね。個人的には、ドローヒッターということもあり、スピンが適度に入るGT1の9度がすごく気に入りました」(内海プロ)
【GT1 10度(AIR SPEEDER)】
・打ち出し角:14.9度 ・スピン量:3202rpm キャリー:222.7Y ・トータル:237.1Y
【GT1 9度(DENALI RED ※AIR SPEEDERから挿し替え)】
・打ち出し角:14.0度 ・スピン量:2676rpm キャリー:227.7Y ・トータル:242.2Y
【GT2 10度(DENALI RED)】
・打ち出し角:12.3度 ・スピン量:2494rpm キャリー:232.8Y ・トータル:246.7Y
3Wは「GT1」、5Wは「GT2」と違うモデルで組むのもアリ

GT1のFWはヘッド後方にもウェイトが装着されている
GT1はドライバーだけではない。FW、UTもラインナップされ、こちらも米澤蓮をはじめ、男子プロが使うケースが散見される。ドライバー同様、GT1、そして比較のためにGT2を試打。ロフトはともに15度だ。

GT1のFW。投影面積が大きく、ドライバー同様、高弾道を繰り出せる
「GT1はドライバーからの流れを汲んで、ヘッドの投影面積が大きく、見た目からして球が上がりそうな雰囲気。15度というロフト(3W相当)ですが、不安が一切ない。実際に打っても、打ち出しが高く、スピンもいい感じで入ります。ドライバーの時も感じましたが、寛容性に優れたクラブです。高さが出るクラブを球が上がらないように打つことはできますが、その逆はプロでも難しい。地面から打つクラブですし、まずは高さが出ることが重要です」

GT2のFW。ツアープロの使用者多数。ラフなどの対応力にも長ける
「GT2の15度は、ど真ん中のモデルということもあり、多くのゴルファーが好みそうなオーソドックスな大きさと形状。弾道の高さとスピン量はGT1よりは減りますが、十分な数字。一方でラフや悪いライでは、GT1より抜けがよさそうなので、使い勝手がいいと思います。15度(3W)はGT1、18度(5W)はGT2、この組み合わせはオススメです」
ちなみにGT2にはロフト「16.5度」というスペックも存在する。「これはいい所を突いていますね」と内海プロ。

GT2、GT3のFWには16.5度のロフト設定がある
「GT2は、16.5度になるとフェース面が良く見えるので、見た目にも高さが出そうで安心できます。実際にGT1の15度より高さが出るので、距離は出したいけど3Wだと打ちこなすのが厳しい、という人にはいいですね。15度よりさらにラフにも強そうな汎用性の高さも感じます。ウェッジの本数を増やしたい人は、FWは“16.5度1本”という手もアリですね」
【GT1 FW 15度(TENSEI 1K BLUE ※AIR SPEEDERから挿し替え】
・打ち出し角:12.1度 スピン量:3690rpm キャリー:208.8Y トータル:222.7Y
【GT2 FW 15度(TENSEI 1K BLUE)】
・打ち出し角:11.4度 スピン量:3312rpm キャリー:207.9Y トータル:222.7Y
【GT2 FW 16.5度(TENSEI 1K BLUE)】
・打ち出し角:13.6度 スピン量:3800rpm キャリー:210.2Y トータル:221.9Y
「GT1」のUTはショートウッド感覚で楽に飛ばせる

GT1のUTは、ヘッドの前後にウェイトが装着され、弾道の高さを調整できる。GT2はトウ、ヒール方向。ボールのつかまり度合いを変化させられる
今年全英オープン初出場を決めた阿久津未来也は、UTもGT1(#5:23度)を選んでいる。曰く「9Wのように楽に上がって、その中に操れる感覚もある。かなり完成度の高いUT」とのことだ。

GT1のUT。ショートウッドのようにやさしくボールを上げられる
「阿久津プロの言う通り、ショートウッドに近い大きさと形状です。これは見るからにやさしそうですね」(内海プロ)
試打モデルは20度だが、実際打つと高弾道でつかまりもいい。
「打っても、UTというよりはショートウッド感覚です。スピンが入って高く上がる。これならグリーンでしっかり止まる球が打てます。UTに苦手意識がある、やさしく飛ばしたい、そんな人は間違いなくこれを選ぶべきです」
一方のGT2は、“THE ユーティリティ”という感じ、と内海プロ。

GT2のUT。UTの王道を行くようなオーソドックスな形状。プロの使用率も高い
「GT2はオーソドックスなUTという印象。普通に打てばUTらしく高さが出て飛ばせるし、アイアンのように“ライン出し”することもできる。さまざまな状況への対応力が高いですね」
【GT1 20度(TENSEI 1K BLUE ※AIR SPEEDERから挿し替え)】
・打ち出し角:14.9度 ・スピン量:5245rpm キャリー:188.4Y ・トータル:198.8Y
【GT2 21度(TENSEI 1K BLUE)】
・打ち出し角:13.8度 ・スピン量:4930rpm キャリー:189.9Y ・トータル:200.1Y

GT1ドライバー、FW、UT。一度打ってみるとそのポテンシャルの高さに驚く人は多いという
ドライバー、FW、UTそれぞれGT1とGT2を打ち比べたが、実際に打つことでタイトリストへの印象は大きく変わると内海プロは言う。
「タイトリストというと、“難しいんでしょ?”というイメージを持っている人は、まだまだいると感じていますが、GT1にしてもGT2にしてもまったくそんなことはありません。特にGT1は、ゴルフが楽になる感じがあります。さらにスペック次第で上級者も満足できる性能を持つ。これは他のライトモデルとは一線を画する部分。今回私も打って改めて気付くことがたくさんありました。みなさんもフィッティングやお店で試打するなどして、その人気の秘密を体感してみることをオススメします」
PHOTO/小林司、野村知也
THANKS/オールデイゴルフ馬橋