教えてくれた人/パッティング専門の平田智コーチ

平田智パッティング専門コーチ(左)右は菅楓華
エンジョイゴルフ ゴルフスタジオ&パッティングラボラトリー福岡でツアープロからアマチュアまで教える。女子プロの菅楓華や昨年、アマチュアでステップ・アップ・ツアーを制し、プロテストに合格した都玲華を教える。
パッティングにおけるルーティンの必要性
ゴルフにおいて「ルーティン」という言葉はよく耳にします。ティーショットやアイアンショットでも大切とされますが、パッティングにおいてもルーティンはとても重要です。パターは1ラウンドで最も多く使うクラブであり、しかもわずか数ミリのフェースのズレや数センチの強弱の違いが結果を左右します。その繊細な一打を安定して打つために、ルーティンは欠かせない要素となるのです。

河本結はパッティングのアドレスに入る際に左太ももを左手で触るのがルーティンになっている(撮影/大澤進二)
まず第一に、ルーティンには「緊張をコントロールする」役割があります。パッティングはプレッシャーを強く受ける場面が多く、特にショートパットや勝負所の一打では、体が硬直したり呼吸が乱れたりすることがあります。そのときに毎回同じルーティンを繰り返すことで、心を落ち着ける習慣が身につき、過度な緊張に流されにくくなるのです。いわばルーティンは「安心の儀式」とも言える存在で、選手を平常心へ導いてくれます。
次に重要なのは「集中力のスイッチ」としての役割です。人間は常に周囲の情報や雑念に気を取られがちですが、ルーティンを行うことで「今からパッティングに集中する」という切り替えが自然に行えます。
例えば深呼吸やラインの最終確認といった一連の流れは、脳に対して「集中する時間だ」という合図を送ります。これにより余計な思考が入りにくくなり、ストロークの精度が高まります。
また、ルーティンは「動作の再現性」を高める効果も持ちます。ゴルフは一打一打が違う状況で行われますが、ルーティンだけは常に同じです。どんなライ、どんな距離であっても同じリズムで構え、同じテンポで準備を整えることで、ストロークそのものの安定性が増します。これにより距離感や方向性のばらつきが減り、自分本来の技術を引き出しやすくなるのです。
さらに、ルーティンは「過去や未来ではなく現在に意識を集中させる」効果もあります。ゴルファーは往々にして「さっき外したパットを取り返したい」「このパットを外すとダブルボギーだ」といった思考に囚われます。しかしルーティンを通じて「今この瞬間」に意識を置くことができれば、冷静でシンプルなストロークにつながります。トッププロが試合の最終ホールでも同じルーティンを崩さないのは、この「現在への集中」を保つためなのです。
総じて、ルーティンは単なる「形」ではなく、心理面と技術面の両方を支える「心の支柱」であると言えます。緊張を和らげ、集中を高め、ストロークを安定させる。その積み重ねが最終的にスコアを左右します。日頃の練習でルーティンを確立し、本番でも同じリズムで実行できるようになれば、プレッシャー下でも自分の力を発揮できるようになるはずです。
次回はそのルーティンの作り方についてご説明をさせていただきます。
文/平田智(パッティング専門コーチ)
取材協力/エンジョイゴルフ福岡