ダイバーシティが広がる第4回「G4Dオープン」
5月14日〜16日、障害者ゴルフの世界大会「THE G4D OPEN ~ the golf for disabled open」が開催されました。4回目の今年は舞台がウェールズのセルティックマナーリゾートに移され、25カ国から80人のトップ選手が集結しました。
今年は、より「ダイバーシティゴルフ」の様相を呈しており、選手たちの出身国や障害の種類も増えましたし、“新顔”も多かった印象です。選手や関係者に聞いた話は週刊ゴルフダイジェスト6月16日号に掲載していますが、この連載では、そちらに掲載できなかった話をご紹介したいと思います。
車椅子ゴルファー、マックス・トギサラの挑戦
本大会、シッティングクラスで優勝したマックス・トギサラ(22歳・HC5.5/SITTING2)は若き車椅子ゴルファーです。
現在、世界障害者ゴルフランキングのシッティングクラス(グロス)で1位に君臨するマックスは、アメリカ・ユタ州の出身。本大会参戦もイギリスに来るのも初めてだとのこと。第1回、第2回大会で優勝した友人、キップ・ポパード(イギリス)の誘いで、チャリティ基金を使って参加したそうです。

終始人懐っこい笑顔で話をしてくれるレフティ・マックスは本当にナイスガイ!しかも250Y級の飛ばし屋だ。「飛ばしにはトレーニングが必要!」
マックスは3歳のとき、父や兄に連れて行かれてゴルフを始めました。順調に上達し、これからもゴルフを真剣に続けよう! と、入る大学も決めていましたが、18歳のときにスキーの事故で下半身不随の障害を負います。しかし彼はゴルフをやめませんでした。
「ゴルフは僕に自由を与えてくれます。プレーしているとき障害は関係ない。僕は下半身不随ですが、心に決めればなんだってできるということを証明するのが僕の使命です。ゴルフは僕のすべて。障害を負ってから立ち上がらせてくれた、すべてを支えてくれたスポーツです。深く感謝しています。ゴルフから学ぶことは多いし、何よりゴルフは楽しむもの。ゴルフが楽しめないんだったら他のスポーツを見つけたほうがいいですよ」
全米アダプティブオープンでは、自身の出場部門で3連覇を重ね、25年のPINGUSDGA選手権での優勝も果たしており、今回また1つ勲章が増えました。しかも彼は、3日間80・71・69でラウンドし、総合部門でも4位に入っています。
「自分のやれることをやっているだけ。常に車椅子の選手だけではなく、他の選手とも戦えることを見せていきたいです」
「マイカート」輸送の壁と、R&Aが残したレガシー
マックスは本大会で、前回までの開催コース、ウォーバーンGC(イングランド)とR&Aのロゴが付いたカートを使っていました。母国で使っている自分のカートは持参せずレンタルをしたということです。

マックスが使用したカートは、大会の“レガシー”としてR&Aの財団がウォーバーンGCに寄贈したもの。レンタルカートがあれば輸送費は必要ない
「慣れは必要だけど、そこまでプレーに影響はしませんよ」
日本の車椅子ゴルファーが世界大会に出場する際のハードルの1つ、“自分の車椅子を飛行機で運ぶ”以外の選択肢を見た気がします。“マイカート”の値段を聞くと、日本円で約460万円だとの答え。「とても高額だよね」。また、アメリカで車椅子ゴルファーのプレーが断られることがあるのかどうかを聞くと、「ほぼない」とのこと。「車椅子カートの仕様や、コースへのダメージがないことなどをしっかり説明して理解してもらっている」そうです。
前々回、前回とこの連載で日本の車椅子ゴルファー、藤田宏さんたちの取り組みをご紹介しましたが、やはり「対話」こそが、道を切り開くのだと思いました。マックスが使っていたカートについて、R&Aのゴルフ開発担当ディレクター、ケビン・ベーカー氏によると、「ウォーバーンでのG4Dオープン開催の“レガシー”として、R&Aの財団からコースに寄付した」とのこと。もう一台は、別のところに寄付したそうです。
「車椅子カートはとても値段が高い。トヨタあたりが作ってくれないだろうか」とこちらに真顔で話をするベーカー氏なのです。

試合中の突然のカートの故障に対応するメカニックスタッフ。後続組を先にプレーさせるなど、臨機応変に対応していた。ここにも「対話」があった
また、日本ではまだ車椅子ゴルファーを受け入れるコースは多くないと伝えると「なぜできないの?」と逆に聞かれました。
「私たちは常々、行くゴルフ場で『障害者を受け入れてほしい』と言っています。もちろん歴史あるコースは尊重しますし、急に変えることは難しい。でも最低限はやってもらうようにしています」
ヨーロッパ障害者ゴルフ協会(EDGA)会長のトニー・ベネット氏もこう語ります。
「10年前はコースにダメージが起きることに関して問題にしたり、プレーヤー自身も運転の仕方を間違えて傷つけたりすることもあった。両方の理解と行動が大事です。プロモーションビデオを作り放映したこともある。マネジャーやグリーンキーパーの協会と話し合った時期もある。今はどのコースもキーパーへの教育や芝のダメージへの理解をしています。今はG4Dのようなメジャートーナメントもありますし、障害者を断るほうが難しい時代にもなってきました」

車椅子カートは、車椅子プレーヤーにとって大切な道具であり体の一部。仕様もさまざま。大変高級なものだが、開発してくれる企業が増えれば……
開催コースの声:受け入れ態勢と「対話」の重要性
さて、本大会と並行して行われていたセミナーで、開催コースの方々がお話をされていたので、そちらをご紹介しましょう。
セルティックマナーリゾートの方は、「今回初めて障害者ゴルフのチャンピオンシップを受け入れた。当然今年は初めてだったので、今後さらに変更するポイントは多くあると考えています。ゴルフコースとしてG4Dオープンを受け入れることについての意味を考えました。ライダーカップを開催したコースとして考えたときに、受け入れ態勢として我々のコースは何を提供できるのか? ということです。現在多くの大企業がこのG4Dオープンにスポンサードを始めているなかで、私たちは障害者ゴルファーに対して苦労のないトーナメントを提供したいと考えました。バンカーの対応などに特徴が出ていると思います。バンカーの改修をすることは当然間に合わないし不可能です。そこで砂自体の盛り方を車椅子ゴルファーに対して変更したり(砂を多めに入れて入口の段差を小さくするようにした)、1人に対してカートを1台提供できるようカートの台数を増やしたりするなど、プレーヤーがトーナメントに集中できる環境を整えました。もちろんこれが答えかどうかはわかりませんが、リゾートコースとしても、宿泊、ゴルフ、アクセスにおいてはかなり便利だったのではないでしょうか」。

大会開催2コースとEGDAのベネット氏。期間中セミナーも行われ、世界の関係者たちが、ゴルフや障害者ゴルフの意義、普及について真剣に話し合った
ウォーバーンGCの方は、「多くのプロフェッショナルトーナメントを開催してきたけれど、この障害者ゴルフのトーナメントはまったく別のものとしてとらえています。G4Dオープンにおける人員配置についてですが、チャンピオンシップトーナメント同じ数の人員を配置しています。ギャラリーの少ないトーナメントにここまでボランティアを配置するトーナメントは非常に稀です。また、多くのゴルフ場がグリーンへのダメージについて恐れていましたが、ここまでのトーナメントを開催するとなれば当然コンディションも最高に整えないといけない。それでもダメージがあったことは(ウォーバーンでは)なかった。それよりもメディアのテレビ塔の設置や看板の設置のほうがダメージを与えているように感じます」。
ここからまた、世界中で多くの「対話」が行われていくことでしょう。
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G4Dオープンの意義、日本人選手の活躍などは週刊ゴルフダイジェスト6月16日号、もしくはMyゴルフダイジェストに掲載中! 是非チェックをお願いします。



