「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

テーラーメイドのカーボン化はフィッティングが目的?

GD ストレッチ形状にこだわらなければ、カーボンクラウンでなくてもいいということですか?

長谷部 そうです。ストレッチさせなければスリクソン、タイトリストのようにカーボンクラウンにしなくてもターゲットに合わせた性能を出すことができます。

GD カーボンクラウンにする目的は重心位置を下げるため?

長谷部 下げるというか、コントロールするため。コントロールするためにクラウンの重量を削っています。

GD チタンでも相当薄く加工できるようになっています。カーボンのほうが薄く、軽くなるってことですか?

長谷部 いや~、単純には比較できないけど、クラウンだったらそうかもしれません。でもかなりメリットはあると思います。

GD テーラーメイドは『Qi10』で、クラウン部の素材を97%までカーボン比率を高めたと言っています。そこで生まれた余剰重量を、さらに下に、奥にもっていく。または手前にもっていくというように使っているということですよね。

長谷部 おそらく……。テーラーメイドの設計思想は昔からフィッティングということを常に考えて、重心距離の長短と、重心の前後、この2点でドライバーのフィッティングは決まるというノウハウを持っています。なので、それが設計のベースにあります。

GD そうなんですか。それは初耳です。

画像: カーボンクラウンを採用した2代目『M1』ドライバー。『SLDR』から採用させる動くウェートが、ソールの前後方向と左右方向の2カ所になった

カーボンクラウンを採用した2代目『M1』ドライバー。『SLDR』から採用させる動くウェートが、ソールの前後方向と左右方向の2カ所になった

長谷部 テーラーメイドはウェイトの種類を何種類か持っていて、この2カ所でもってバランスを変えられるので、余剰重量があれば10数グラムから20数グラムを平気で変えることができます。その余裕ってフルチタンのヘッドではなかなかしづらいものがあります。

余剰重量を稼ぐという意味では、テーラーメイドはそこが念頭にあるので、どんどんカーボンにして、余剰重量を生み出して、フィッティングを楽にしよう、というのが基本的な考えだと思います。だからテーラーメイドが目指しているのは低重心だけでなく、フィッティングが目的と言えます。

画像: ダスティン・ジョンソンがハワイ・カパルアで392ヤードドライブを放ち話題となった初のツイストフェース搭載の『M4』ドライバー(2018年)。フェース開発競争がこの頃からはじまった

ダスティン・ジョンソンがハワイ・カパルアで392ヤードドライブを放ち話題となった初のツイストフェース搭載の『M4』ドライバー(2018年)。フェース開発競争がこの頃からはじまった

GD そう考えると、スリクソンもタイトリストも、これがロースピンモデルだ、レギュラーモデルだというような言い方をしていません。ヘッドサイズや形状で性能を分けています。

長谷部 スリクソン、タイトリストのメリットを言うならば、ドライバーの用途を明確にわけて数種類のヘッドで対応できていることです。スリクソンは2種類、タイトリストは3種類プラス1種類あったりする。そのなかでプロのフィッティングができるようにヘッドサイズがわかれています。

プロは、「芯を外さないのでそんなに低重心でなくてもいい」ということがわかっているので、メーカーとしても「じゃあ、どれぐらいの肉厚で作ればいいか」もある程度わかる。製造技術が上がってフルチタンでもできるので求められる性能は達成するので、松山英樹のドライバーは、フルチタンでできたということでしょう。

日本の女子プロもゼクシオではなくスリクソンで十分やさしく飛ばせるようになっているというのは、そんな低重心すぎないということもあるでしょう。ただ、それはある一定の打点でとらえられるプロだから、 そんなに低重心にしなくても、ちょっとフェースの上側で打てる技術があるじゃないですか。でもアマチュアは上下にも打点がバラつくから、できるだけきるだけ重心を下げておいたほうが重心の上で打つ確率が増えるので、低重心が飛びますよ、というロジックは成り立つわけです。ツアー用とかプロ用に特化して作るんだったらフルチタン。むしろそのほうが製法的にも安定して供給できたりするし、壊れるリスクが少なく済みます。

GD そうすると、カーボン比率が高いということは、むしろアマチュアにメリットがあるということ?

長谷部 アマチュアにメリットはあるし、プロとアマチュアを両方考えた時にフィッティングしやすいとかはありますね。

GD フルチタンはどちらかというと上級者向け?

長谷部 タイトリストで言えば、「大中小」のヘッドを何種類か作っておけば、プロのフィッティングもできますよ、みたいなところがあります。「975D」の時代からちょっとずつモデルを増やして今3種類にまで行き着いています。スリクソンは2種類のヘッドで対応していますよね。

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