「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

フェースの中央と重心の合致にメーカーは注目している

GD フルチタンとカーボンコンポジット、作りやすいのはどっちですか?

長谷部 フルチタンのほうが絶対作りやすい。カーボンが加わると接着工程とか成型の工程が複雑で大変です。

GD クラウンの丸みとかも、チタンは出来るけどカーボンは難しいと聞いたことがあります。

長谷部 カーボンで成型しても跳ね戻される素材なので、そこもちゃんと計算して作らないといけないので難しいですね。

GD カーボンコンポジットで記憶に残っているのは、キャロウェイの『レイザー』です。フェース側のフレームにカーボンのボディを後ろからカパッと合体させた構造のヘッドでしたが……。『パラダイム』とか、『Aiスモーク』も同じような構造じゃないですか?

長谷部 『レイザー』はランボルギーニと提携していたなかで生まれた「フォージドカーボン」という圧縮技術を使い、「360度フェースカップ」というキャロウェイ独自のフェース技術が合わさったもの。基本的にはそのときのテクノロジーが生かされているとは思いますが、カーボンの成型技術に関してはたぶんキャロウェイが優位なんじゃないかと思います。これは特別な技術で、キャロウェイにしかできないんじゃないでしょうか。

GD カーボンを使うメリットは何なんでしょうね。

長谷部 チタンが良いか悪いかということよりも、そのモデルが目指している低重心率とか、フェース面上の重心位置のバランスとかが合致すればチタンでもできますよ、というのが今の製造技術でしょう。

GD 今の基準からすると低重心率62%が標準的なフェース面上の重心の高さで、60%以下のものもあれば、70%に近いものもあります。こうやってパーセントで見ると大きな違いのように見えますが、「点」でみると意外と僅差だなと思うことがあります。むしろアマチュアの打点のブレのほうが大きいのではないかと。

長谷部 アマチュアの打点のブレのほうが大きいです。そのブレを慣性モーメントの大きさで補って、方向性に影響が出ないようにしようと考えます。だけど、アマチュアが店頭で試打をしたときスピンが減れば飛んじゃうじゃないですか。

GD たまたまの一発とかありますからね。

長谷部 それがあるがゆえに、慣性モーメントよりは重心の低さを求めていた時期がある。だけど、低重心ドライバーを買ったものの打球がドロップして難しいという評価になると、すぐに中古市場に出回ってしまったことが過去にあったから、今そこまで重心の低さをウリにしなくなっています。

GD 最新の考え方としては、重心の高さ云々よりも、フェースセンターの一番弾くところに重心がありますよ、というフェースの中心と重心を合わせる傾向にあります。

長谷部 そっちにゴルファーの眼を移していますよね。

GD それって理にかなっている?

長谷部 初速が一番効率的に上がりやすい考え方で……。

GD そこは盲点だったというか、フェースの真ん中に二重丸みたいなデザインがフェースの中心にあって、「ここで打てばいいんだ」と思っていたことがあります。でも、それはフェースのデザインであって、実際には重心(スイートスポット)がそこにあるってわけじゃなかったんですね。

長谷部 フェースの中央に重心があるわけではないので、センターのマークは打点をイメージさせるデザインです。

GD 最近は、その見た目のスイートスポットと実際のスイートスポットを合わせるクラブが出てきています。

長谷部 一部のクラブにそういったものがありますね。フェースの下の部分をソールからちょっと浮かして、フェース面上の重心とフェースの中心を合わせるクラブが出てきています。フェース面を上げるのが一番手っ取り早い高さの調整になるので、フェースの下部を「ここはフェースじゃない」と面取りをして、ここから上がフェースと計算すれば、ちょうどフェースの真ん中に重心をもってくることができます。

画像: フェース面上の重心とフェース中央を合致させるために、フェースの下部がソールより浮いている。写真はゼクシオ『エックス』ドライバー(2023年)

フェース面上の重心とフェース中央を合致させるために、フェースの下部がソールより浮いている。写真はゼクシオ『エックス』ドライバー(2023年)

GD これだとヘッド全体から見た低重心率とは違ってきますよね。

長谷部 違います。あくまでもフェースデザインのなかでの重心の高さであって、ソールの高さで言ったら低く無いです。

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取材協力/GDOゴルフガレージ

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