「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

7番ウッドを軸にすれば14本のセッティングが見えてくる

GD 今日はフェアウェイウッド(以下FW)をテーマにしますが、最近FWのヒット商品というのが出ていないような気がします。女子プロの間で流行したヤマハ『RMX VD』ぐらいしか思いつきません。

長谷部 FW、ユーティリティは選ぶ基準が皆さんマチマチで、プロでも悩むアイテムで、コロコロ変わったりするし、コースのセッティングで変わったりします。逆に「コレ!」という1本が決まると、それを10年ぐらい使い続ける人もいるくらい手に馴染むアイテムになります。

メーカー側からしても、使う側からにしても、「何がいいんだろう?」というところがあって、定めきれないところがあります。

それと、7番ウッドにもっと注目してもいいのではないかと思うんです。今のいろいろなセッティングを考えたときに、7番ウッドを入れると面白いんじゃないかと。

GD FWって長く使う傾向にあったじゃないですか。 それって今、ドライバーが2年に1回、または1年に1回変わりながらも、FWの買い替えサイクルはそこまでは早まってないと思います。信頼感みたいなものがFWにあって、ドライバーのように飛距離がどうのといったクラブではないような気がします。

長谷部 そうですね。以前はユーティリティが200ヤード前後を攻める救世主的な位置付けだったんですけど、アイアンのストロングロフト化と、番手への考え方の変化でユーティリティがどんどん下に下がってきています。改めて200ヤードが打てる簡単なクラブとなると、ショートウッドのほうが球も上がりやすいし、距離も出しやすい。

長さの問題はありますけど、そういった意味では、7番ウッドが200ヤード前後のアマチュアの救世主になるべきなんじゃないかなと思います。

あとはメーカーが7番ウッドをどこまで真剣に作っているのかっていうことを考えたときに、3番ウッド、5番ウッドは目指すべき重心位置が見えているんですけど、7番ウッドになると、目指すべき重心位置すらも定めきれてないケースもある。流れで作ってしまうことが多い。

モデルチェンジが2年に1回のドライバーと合わせてFWも出してくるとしたら、その時その時でFWもだいぶ変わっていて、今日、GDOゴルフガレージの店舗を見て回りましたが、豊作な年とそうでない年みたいなものを感じます。

メーカーによってもバラつきがあるので、新製品に限らず、どういった7番ウッドがいいのか? 5番ウッドとの流れで考えていいのかなと思います。

GD メーカーによって何種類かのブランドを持っていても、FWは5番までで、7番ウッドがないものもあります。むしろ、米国メーカーのほうが7番ウッド、場合によっては9番ウッドまでラインナップしています。

長谷部 ユーティリティが市民権を得たのがここ10年。それに伴い7番ウッドの販売数量がどんどん落ちてきている事実があります。そうすると、メーカーとしてもなかなか そこに着目しづらい点もあるんですけど、米国メーカーは幅広く商品を扱っていることもありますが、下の番手までニーズがあればちゃんと開発してラインナップも豊富に揃えています。

キャロウェイは元々ショートウッドを得意にしてきたメーカーなので、しっかり下の番手まで作っています。

GD 今のユーティリティだと22度。一般的に4番ユーティリティになります。 19度の3番ユーティリティは、アマチュアの世界ではあまり普及してない。そうすると、ここはロフトが重なっています。7番ウッドと22度のユーティリティ、どっちを選ぶ?ってなると、FWが得意な人はFWを、 ユーティリティが得意な人はユーティリティを使いなさいっていう風になっています。

本当のところクラブ的に考えると、FWとユーティリティ、どっちがやさしくて、どっちが扱いやすいというのはあるんですか?

長谷部 どっちが得意という考え方は、もちろんあるんですけど、何を目指したいかで変わってきます。ショートウッドはユーティリティよりも球が高く上がるメリットを持っているので、球を高く上げたい人は、得意不得意に関わらずショートウッドにトライしてもらいたいですね。

ショートウッドが苦手な人の理由は何なのかを考えると、クラブの長さ。ちょっと長すぎるからボールに綺麗にコンタクトできない人がけっこう多い。

例えばスチールシャフトにして安定させるとか、バランスが少々軽くなっても1インチぐらい短く握ることでも十分ショートウッドが打てるようになると思うので、そういったことを考えてもいいのではないでしょうか。ウッドが得意だから、もしくはウッドが苦手だからユーティリティを選ぶっていうよりは、200ヤードをどういう球筋で攻略したいのかっていうのを考えると、ユーティリティはまだ弾道が低いように思います。

これからの季節、芝生が伸びてきてラフが元気よくなってきたときに、ユーティリティをラフから打つのは結構しんどいんですよね。ユーティリティはアイアンと同じようにフェース面が大きいのと、アイアンよりもソール幅が広いので抜けが悪くなる可能性がある。そこに関して言うと、ソールが丸まっていて、ある程度ヘッドがコンパクトなショートウッドのほうが抵抗が小さく、ショートネックであれば芝の絡みも少なくなるので、ショートウッドのメリットは結構あるように思います。

GD アマチュアはFWの組み合わせといえば「3番、5番」と考える人が多いようですが、実力を考えると「5番、7番」がそれ相当になりますね。

長谷部 アマチュアがイチバン苦手に感じるのが3番ウッドでしょう。ドライバーはティーアップしているという恩恵があるので、長くてもヘッドが大きいので当てられる。 でも、3番ウッドは地面ギリギリを滑らせてきて綺麗にコンタクトしなければいけない。これは相当アマチュアには難しい。クラブ14本を自由に選べることを考えたら、確実に打てるのが5番ウッドになります。

GD 打てるクラブをバックの中に入れるのが大原則だとしても、使い勝手で言ったら、まあまあ飛ぶ5番ウッドとやさしい7番ウッドが欲しくなります。

長谷部 「ストロングファイブ、イージーセブン」という組み合わせが、アマチュアにはいいでしょう。

画像: 米国ブランドには7番ウッドがラインナップされていることが多い。写真はキャロウェイ『ビックバーサ』。ロフト22度、重さ296グラム。「イージー7」候補のひとつ。

米国ブランドには7番ウッドがラインナップされていることが多い。写真はキャロウェイ『ビックバーサ』。ロフト22度、重さ296グラム。「イージー7」候補のひとつ。

GD それに、ユーティリティをどう絡ませていくか。170ヤードから200ヤード、この30ヤードをどうカバーしますか?という考えになります。

長谷部 なので、まずきっちり200ヤード、もしくは190ヤードを高い弾道で打てるクラブを1本入れとくだけでも、ちょっと長めショートホールに来た時にも安心して打てる。

ユーティリティが市民権を得て増えてきていますが、いざユーティリティを選ぶとなると、シャフトの長さ、硬さ、ロフトなどを考えると、結構セッティングするのが難しい。

であれば、7番ウッドを軸にして決めていくことによって、その下のユーティリティを選ぶのも簡単になってくることは想定できます。

This article is a sponsored article by
''.