5月の「For The Players By The Players」で、日本ツアー2勝目を挙げたマイケル・ヘンドリー。13年から日本ツアーに参戦しているヘンドリーは、15年には東建ホームメイトカップで初優勝。その後も日本と豪州ツアーを主戦場にし、日本でも馴染みの深い選手です。
そのヘンドリーから昨年東建カップ直後、JGTOに公傷申請がありました。ボクは当時、広報担当で知る立場にあったのですが、理由は白血病でこれから闘病生活に入るという内容でした。
この時期のヘンドリーは絶好調で、2月、豪州ツアーで6年ぶりの4勝目を挙げると、翌週のアジアンツアーのワールドシティ選手権で2位に。これにより3回目の全英オープンの出場権を手にし、その勢いで来日した東建カップでも最終日を最終組で回っています。
しかし、その直後、日本から帰国した母国ニュージーランドで、白血病を宣告されることになるのです。ヘンドリーが病気のことを公表したのは昨年5月、約3カ月ぶりに更新したインスタグラムでした。
治療がひと段落した時期だったのでしょう。ロイヤルリバプールで開催される、第151回全英オープンの出場者だけに与えられるネームタグの写真とともに、白血病であること、そのため全英には出場できないこと、しかし必ず戻ってくるという強い決意が、長い文章で記されていました。
この時期ヘンドリーは、もし残りの人生が短いのだとしたら、残りの人生で何をしたいか考え続けたそうです。そこで出た結論が次のこと。
ヘンドリーには2人の娘がいて、最後まで娘たちを励ます存在であり続けたい。そのためには強い父親であり続け、戦いに勝つ姿を見せたい。それをモチベーションに病と闘い、ゴルフの世界に戻ると決めたのです。一方で抗がん剤の影響もあり、宣告から6週間で体重は15㎏も減り、あばら骨が浮き、頬がそげ落ちる自分の姿を鏡で見るのが、本当に苦しかったと打ち明けてもいます。お互いシャイな性格もあるのでしょう。
ボクとヘンドリーは一度も話をしたことがありませんでした。
優勝した「For The Players By The Players」では3日目に首位に立ち、その流れで中継の解説席に呼んだときが最初でした。物静かですが、秘めた強い意志を感じるナイスガイでした。
放送中は彼の病気のこと、克服した話題にはなりましたが、娘さんたちを励ます存在でありたいというエピソードは話せませんでした。話すと間違いなく泣いてしまいそうだったので……。
しかし、ヘンドリー自身は意外とサバサバとした表情での優勝でした。
昨年9月、ニュージーランドの下部ツアーであるチャールズツアーから復帰しましたが、10月に5人のプレーオフを制しての復活優勝。くしくもその日は44回目の誕生日でした。有言実行で2人の娘に強い父を見せたヘンドリーは、その場で泣き崩れました。
今年、ロイヤルトゥルーンで開催される全英オープン。R&Aは昨年出場できなかったヘンドリーを公傷扱いとし、今年の大会の出場権を与える粋な計らいをしています。スコットランドでも”強い父”に期待したいですね。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月16日号「さとうの目」より