2024年8月20・27日合併号の「週刊ゴルフダイジェスト」では、“ミニドライバー”を出すメーカーが増えてきたことから、大慣性モーメント時代にあえて小ぶりなヘッドを選ぶメリットを考察し、テーラーメイドとキャロウェイのミニドライバーを試打している。「みんなのゴルフダイジェスト」ではその一部を紹介しよう。

ヘッド体積ではなく「長さ」がポイント!

「ミニドライバー」というと、ただヘッドが小さいドライバーと思いがちだが、「ミニ」を「ショート」と置き換えてみると、その存在理由が明確になってくる。ミニ(コンパクト)ドライバーとは、ショート(短尺)ドライバーなのだ。

まず、ドライバーの長さは1900年代に入ってから100年間以上、42~43インチ前後で安定していたわけだが、1991年に大型ヘッドの「ビッグバーサ メタル(190cc)」が登場すると43.75インチに。1995年「グレートビッグバーサ チタニウム(253cc)」、1997年「ビゲスト ビッグバーサ(290cc)」の登場で一気に46インチにまで達している。それ以降ドライバーの長さは平均45インチを下回ることなく、今日まで推移している。

画像: 右から1991年「ビッグバーサ メタル」、1995年「グレート ビッグバーサ チタニウム」、1997年「ビゲスト ビッグバーサ」。ドライバー長尺化の流れを作ったモデルだ

右から1991年「ビッグバーサ メタル」、1995年「グレート ビッグバーサ チタニウム」、1997年「ビゲスト ビッグバーサ」。ドライバー長尺化の流れを作ったモデルだ

43インチがデフォルトだった時代からすれば45インチを超えたドライバーは“長尺”であり、45インチ以上がスタンダードとなった現代では、43.5インチは“短尺(ミニ/ショート)”と呼ばれる。まずは、ドライバーの長さについてこうした歴史的背景があることを知っておいていただきたい。

ではなぜ、21世紀も4分の1を経過しようとする今、テーラーメイド、キャロウェイといった大手クラブメーカーから43.5インチのショートドライバーが発売されるのだろうか? 両社の言い分を聞いた。

「そもそもヘッド体積が460ccと大きく、シャフトが長いドライバーに対して苦手意識を抱いているゴルファーが一定数います。だからシャフトが短めでヘッドもコンパクトなミニドライバーが選択肢として必要である、というのがテーラーメイドの基本的な考え方になります。2014年の『SLDR Sミニドライバー』からその系譜は続いています」(テーラーメイドゴルフ/柴崎高賜氏)

画像: 上段右から2014年「SLDR Sミニ」、2015年「エアロバーナー ミニ」、2019年「オリジナルワン ミニ」、下段右から2021年「300ミニ」、2023年「BRNR ミニ」

上段右から2014年「SLDR Sミニ」、2015年「エアロバーナー ミニ」、2019年「オリジナルワン ミニ」、下段右から2021年「300ミニ」、2023年「BRNR ミニ」

「『パラダイム Ai Smoke 340』に限っていえば、当初は米国の遊戯ゴルフ施設『TOP GOLF』のレンタルクラブとして発想されたヘッドの大きさ、長さのドライバーになります。壊れにくくて、初心者でもボールに当てやすいドライバーとはどういうものか? そうした観点から開発が始まったのです。ただし43.5インチ前後のクラブについては、これまでも2番ウッド的なクラブで対応してきており、ミニドライバーへのニーズも同様のものがあると思います」(キャロウェイゴルフ/茂貫太郎氏)

キャロウェイのミニドライバーの開発動機は非常に意外だが、試作テストを繰り返す中で、プロサービスをはじめとする多くの関係スタッフの注目を集め、「こんなにパフォーマンスがいいなら一般発売すべきではないか」という機運が一気に高まっていったという。結果としては、テーラーメイドと
同じように、45インチ以上の通常ドライバーを苦手にするゴルファーの選択肢となり得ると判断されたわけだ。

PGAツアーでも流行の兆し!? 長短二刀流で切り開く新しいドライバーの世界

プレーヤーのミニドライバーへの興味は、単に最新の大型ヘッドを苦手とするプレーヤーの選択肢という枠組みを超えてきている、と柴崎氏は言う。

「テーラーメイド契約のトミー・フリートウッドがその恒例です。彼は通常レングスの『Qi10 LS』を使いながら、『BRNR ミニ』もセッティングしています。彼のように長さの違うドライバーを2本入れることで、最大飛距離が出る『Qi10 LS』とフェアウェイウッド(5W)のギャップをちょうど埋めることができるのです」

ギャップとは飛距離の差であり、ドライバーと5Wの長さの隔たりとも言える。現在の長尺ドライバーは最大飛距離を追求しているため、開発者はシャフトを短くすることはまずしない。長尺のままヘッドスピードを上げ、長さによる打点のばらつきは広域反発フェースや慣性モーメントの増大によって補うのが基本スタイルだ。

画像: 画像上のトミー・フリートウッドは9度の「Qi10 LS」ドライバー、13.5度を12度に立てたミニドライバー「BRNRミニ」、18度の5W「Qi10」というセッティング。全英オープンでダスティン・ジョンソンもテーラーメイドの最新「BRNRミニ ドライバー カッパー」の13.5度を使用(撮影/Blue Sky Photos、姉崎正)

画像上のトミー・フリートウッドは9度の「Qi10 LS」ドライバー、13.5度を12度に立てたミニドライバー「BRNRミニ」、18度の5W「Qi10」というセッティング。全英オープンでダスティン・ジョンソンもテーラーメイドの最新「BRNRミニ ドライバー カッパー」の13.5度を使用(撮影/Blue Sky Photos、姉崎正)

「長さは同じ43.5インチですが、ヘッド設計の進化によって90年代のメタルドライバーとは圧倒的に違う飛距離とやさしさを備えているのが最新のミニドライバーです。でも、45インチ以上の通常ドライバーとどっちが飛ぶか? と聞かれれば、それは長くてヘッドが大きいほうが飛びますと自信を持って答えます(笑)。ミニドライバーは、長いドライバーが苦手なプレーヤー向けではあるのですが、実際は別のクラブとして考えていただいたほうがいいとも思っています。通常ドライバーとフェアウェイウッドのギャップを埋める新しいカテゴリーのクラブ。ある意味レスキュー的なクラブだと個人的には思います」(柴崎氏)

長くて最大飛距離が狙える「ディスタンス系」ドライバーと、短くて当てやすくフェアウェイを狙っていける「スコアリング系」ドライバー。同じ土俵で比較して二者択一するのではなく、別物として共存させてこそ大きな意味がある。

あまり使っていない3Wを抜いて、ショート(スコアリング)ドライバーを入れる。それが新しいドライバーの二刀流セッティングではないだろうか。

R&A適合ドライバーリストにタイトリストとPXGのミニドライバーがリストオン!

ミニドライバーに注目しているのはキャロウェイ、テーラーメイドだけではない。この春にはR&Aの適合ドライバーリストに「PXG Secret Weapon」が登録された。トウ、ヒール、フェース寄り、後方と4つのウェイトポートを備え、ロフトは13度。

画像: PXGのSecret Weapon(画像左)とタイトリストのTSR(画像右)

PXGのSecret Weapon(画像左)とタイトリストのTSR(画像右)

程なくしてタイトリストもロフト13度のネックに2Wと刻印された「TSR」を登録。こちらは5月のウェルズファーゴ選手権からマックス・ホーマが使用しているプロトタイプミニドライバー(2W)のようだ。元々はドライバーと3Wの飛距離差に悩んでいたキャメロン・ヤング用に作られた投影面積の大きいティーショット用のクラブだったという。

「すべての数字がドライバーと3Wの中間で、とくにドローが打ちやすい。僕はドローを打つのがそこまで得意ではないから、左から右への風が吹いたときは、かなり重宝するね」とホーマ。

ドライバーでは低弾道のフェード、このクラブでは3Wよりも飛距離の出るスピンの利いたドローと、クラブによって2種類のティーショットを打ち分けているという。未発表のため市販されるかどうかもわからないが、2018年からPGAツアーでドライバー使用率ナンバー1のタイトリストだけに気になる一本だ。

画像: マックス・ホーマは9度の「GT3」ドライバー、13度のミニドライバー(2W)、21度の「GTフェアウェイメタル」のセッティング(PHOTO/Getty Images)

マックス・ホーマは9度の「GT3」ドライバー、13度のミニドライバー(2W)、21度の「GTフェアウェイメタル」のセッティング(PHOTO/Getty Images)

TEXT/高梨祥明(Position ZERO)
PHOTO/Tomoya Nomura、Blue Sky Photos、Getty Images  

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2024年8月20日・27日合併号では、テーラーメイドとキャロウェイのミニドライバーをはじめ、同じメーカーのドライバー、3Wとの比較を掲載している。気になる方はぜひチェックをお願いします。

ミニドライバーはこんな人に合う!

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