例年の「大王製紙エリエールレディス」はダウンジャケットが必要なくらい肌寒い印象でしたが、今年は20度くらいの陽気でプロアマ大会も好天に恵まれています。
今大会では、①メルセデス・ランキング50位までのシード権争い、②同55位までの前半戦出場権争い、③同70位までのQT(予選会)ファイナルステージへの出場権、そして④最終戦「JLPGAツアー選手権リコー杯」への出場権とそれぞれの選手が目標とする出場権獲得に向けて熾烈な争いが繰り広げられる大会となります。
ちなみにシード権争いでは、50位に木戸愛選手、51位に山内日菜子選手、52位の仁井優花選手、53位の岡山絵里選手、54位の佐藤心結選手、55位に笠りつ子選手、以下、56位内田ことこ選手、57位宮田成華選手、58位藤田かれん選手がまずは予選通過をかけて明日の初日を迎えます。なお、51位の山内日菜子選手、54位の佐藤心結選手は今季優勝しており、シード権は獲得済みです。
デジタル派とアナログ派の練習法
プロアマ大会の練習グリーンで最後の仕上げをする選手を取材してみましたので紹介します。パットはライン読み、打ち出し方向、距離感の3つの要素が重要ですが、それぞれの選手が様々な練習方法で取り組んでいます。
まずはアナログ派の練習法として、金田久美子選手は”全部乗せ”の練習をしていました。ストロークの軌道が描かれたパターマットの上にボールを置き、ボールから約30センチ先のマットの先端にティーを立てゲートを作り、さらにボール後方からカップまでゴムを引っ張りストレートラインの目安を作っています。
ティーでゲートを作って打ち出しの方向を出し、マットでストロークの軌道をチェック、ゴム紐でラインのイメージを明確するという、まさに”全部乗せ”の練習法です。マットの上に置いてあるのは傾斜を測る計測器でボールとカップの左右の傾斜を測りストレートラインを見つけています。
続いて一本のレールの上をボールを転がす村田理沙選手。わずかでも打ち出し方向がズレたりストロークの軌道もインパクト付近では真っすぐに入らないとレールから落ちてしまうので、集中力を持って打ち出し方向に打ち出す練習法です。
アナログ派の最後は藤田かれん選手。ショット練習でも使用するアライメントスティックをパターヘッドと胸の下にあてがいボールを打っています。渡邉彩香選手から教わったというこの練習法は振り子の支点と振り子であるヘッドの距離が変わらないことでヘッドの軌道を安定させます。
手首を使わないストロークにもつながるので安定した距離感や打ち出し方向の練習になっています。
デジタル派の野澤真央選手はトラックマンを使って計測しながら調整していました。弾道計測器のトラックマンですがパット用のモードがありパターヘッドの動きとボールの打ち出し方向、距離などのボールデータの30項目の計測データが得られるそうです。その中で野澤選手が重視しているのは打ち出し角度と転がった距離の2つ。
打ち出し角度が1度ズレると3m先ではカップから外れるという原則に従い、打ち出し角度をプラスマイナス1度以内と正確な3mと距離感を練習していました。
デジタル派の最後は青木瀬令奈選手。インドアゴルフスタジオで傾斜のある人工芝のグリーンにプロジェクターを使ってラインやボールの転がるスピードなどを投影する「パットビュー」という機器がありますが、実際のグリーン上の傾斜を測りVRを使ってヘッドアップディスプレーに傾斜やラインを表示させる「パットビューX」を2週前から使用しています。
実際にのぞかせてもらいましたが、指先を使ってボール位置やカップ位置、グリーンのスピードなどを設定すると目の前に白いボールの通り道が表示されます。その線に沿ってボールを打ち出すとカップインするという、なんとも近未来的なデバイスです。
金田久美子選手が使っていたパッティングマットをディスプレイ内に表示させることもできるので、ストロークのチェックも可能。ただし、お値段は240万円くらいするようなのですが、前週の「伊藤園レディス」の最終日に5連続バーディを含む9バーディ2ボギーでプレーし、4位タイでフィニッシュしたので、費用対効果は十分にありそうです。
これらの練習法は基礎練習として日々のルーティンのなかでこなし、打ち出し方向の安定、ストロークの安定を狙います。そのあとに様々な距離やラインのカップを狙って打つパット練習へと移行していきます。
今週のグリーンはある程度止まる軟らかさはあるものの転がすと速い仕上がりになっています。年間女王を決めた竹田麗央選手は前週は予選落ちのため休養は十分。9勝目を目指すことでしょう。明日の初日も現地からのレポートをお届けします。