日々さまざまな理論や用語によって語られるゴルフ。頻繁に耳にするものの実はよく理解できていないことがある……そんなゴルファーも多いのではないだろうか。競技志向のアスリートゴルファーから厚い信頼を寄せられ、ツアープロコーチとして女子プロの活躍を支えた経歴もあるティーチングプロの柳橋章徳氏に、今さら聞けない、だけど今だからこそ知りたいゴルフの用語、理論あれこれを解説してもらおう。今回は「Xファクター」について。
画像: プロコーチの柳橋章徳氏

プロコーチの柳橋章徳氏

柳橋章徳(やぎはし あきのり)
父親の影響で小学5年生からクラブを握る。2011年よりゴルフコーチとしてのキャリアをスタート、2021年より額賀辰徳プロのツアープロコーチとしての活動を開始。
USLPGAで活躍する女子プロのコーチも務めて復活優勝へ導き、アメリカへの帯同コーチも経験。現在は臼井麗香のコーチを務める。

自身のYouTubeチャンネル「BREAKTHROUGHGOLF」では本気ゴルファーに向けた配信をしており、データ解析、クラブ力学や運動力学に則ったスウィング作りを得意とする。

「Xファクター」っていったい何?

「Xファクター」という言葉を聞いたことがあるだろうか。どうやら飛ばしに繋がる要素のようだが、果たしてどのようなもので、どうスウィングに活きるのか。

画像: 2本のアライメントスティックを用意した柳橋コーチ

2本のアライメントスティックを用意した柳橋コーチ

説明にあたって、柳橋コーチは2本のアライメントスティックを取り出し、1本をズボンのベルトホール、もう1本を両肩のラインにあてた。

「Xファクターを一言で言うと、ダウンスウィングでできる肩と骨盤の捻転差のことです。スウィングでは肩と骨盤が捻転しますが、たいてい肩のほうが捻転の度合いが大きくなるので両者の間に捻転差が生まれます。

この捻転差が大きい状態を“Xファクターが大きい”、小さい状態を“Xファクターが小さい”と言い、Xファクター(捻転差)が大きければ大きいほど蓄積されるエネルギーは大きくなります。アマチュアの方に見られるドアスウィングと呼ばれる動きは、肩と骨盤が一緒に回ってXファクターがない状態のことを指します」(柳橋コーチ・以下同)

画像: 肩と骨盤が一緒にまわる「ドアスウィング」

肩と骨盤が一緒にまわる「ドアスウィング」

画像: 2本のスティックが交差して「X」見える

2本のスティックが交差して「X」見える

この状態でのダウンスィングをやや上から見ると2つのスティックが交差して「X」に見える。だからXファクターというわけか。しかし、バックスウィングでも肩と骨盤の捻転差はできる。そっちは気にしなくていいのだろうか。

「テークバックからバックスウィングでは、さほどXファクターを気にしなくても構いません。捻転具合は個々の体の可動域や柔軟性に左右されるからです。ツアープロを見てみても、バックスウィングで肩をしっかり回し、ダウンスウィングでXファクターを出しにいく選手のほうが多いと思います。

画像: 切り返しでXファクターが大きくなる

切り返しでXファクターが大きくなる

要は、切り返しでXファクターが大きくなっていることが重要。それを維持、もしくは大きくなった状態をインパクトまで逃さないようにするのが理想です。たとえばPGAツアーの選手の肩は100度くらい回ります。骨盤は多く回る選手でも70度くらい。よく“肩は90度、腰は45度”と言われますが、両者の差が40度くらいあるといいと思います」

とはいえ、むやみにXファクターを意識する必要はなく、スウィング中にキネマティックシークエンス(運動連鎖)が正しく行われれば、多かれ少なかれXファクターを伴ったスウィングになり、フィニッシュまでXファクターがなくなることはないという。

「Xファクターがなくなるということは、スウィング中にどこかが止まってしまうということです。大抵は骨盤が止まりますが、その瞬間にキネマティックシークエンスは崩壊し、クラブの先端が返ってしまう流れになります。その結果、フェースの開閉が過剰になって打点がズレたり、ヘッドの最下点の位置がズレたりしはじめます」

Xファクターを上手く生み出すには、クラブと足が“引き合っている”ことを意識すべし

アマチュアゴルファーの場合、キネマティックシークエンスがうまくできていないためにXファクターが小さくなっていたり、そもそも無かったりすることが多いが、それを防ぐにはどうしたらいいのか? 

スウィングをスタートした瞬間にダウンスウィングが始まっているイメージで動くことが大切です。難しく聞こえるかもしれませんが、テニスや野球のバッティングなど、リアクションスポーツでは自然に行われています。飛んできたボールを打とうとした時、足はインパクトを迎える前にすでに踏み込んでいますよね。ゴルフは止まっているボールを打つのでリアクション的な動きが阻害されがちですが、プロは例外なく、テークバックした瞬間から足のエネルギーが左方向に向かっています。Xファクターという言葉が指すのは肩と骨盤の捻転差のことですが、その捻転差は足のエネルギーとクラブの引き合いによって生まれるからです」

画像: 飛んできたボールを打とうとするとき、インパクトを迎える前すでに左に踏み始めている

飛んできたボールを打とうとするとき、インパクトを迎える前すでに左に踏み始めている

画像: ゴルフでも、テークバックした瞬間から左足方向にエネルギーが向かっている

ゴルフでも、テークバックした瞬間から左足方向にエネルギーが向かっている

画像: バンドを張ってアドレスした状態がやっと“立っている”という状態

バンドを張ってアドレスした状態がやっと“立っている”という状態

「足とクラブが引っ張り合うという感覚は、僕が考案した柳橋バンドを足につけてスウィングしてみるとわかります。バンドが引き伸ばされた状態でアドレスすると、結構足に力が必要なのですが、これがやっと“立っている”という状態です。その状態から終始たるまないようにスウィングしてみてください。

初めての人にはキツいですが、これがXファクターがしっかりできている状態なんです。引き合う強さは人それぞれですが、バンドが伸び切ったままスウィングできればXファクターは発生しています」

画像: バンドがたるむのはNG

バンドがたるむのはNG

肩と骨盤の捻転差を作るだけなら腰を回さず肩だけ回せばいいが、それでは十分なエネルギーが得られない。始動と同時に足が反対に踏み込まれて引き合う。これによってドアスウィングがなくなり、切り返し以降で肩と骨盤の捻転差を作れるというわけだ。

Xファクターをしっかり作るには「ステップ打ち」がオススメ!

足を閉じてアドレスし、左足踏み込みながら打つと自然にXファクターが生まれる。

画像: ステップ打ちで大きなXファクターを身につけよう

ステップ打ちで大きなXファクターを身につけよう

TEXT/Kazuya Kishi
Photo/Tsukasa Kobayashi
THANKS/GOLFOLIC 中延店

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