歴史ある名門コース、東京ゴルフ倶楽部で行われた第89回日本オープン。ナショナルオープンならではの難しいセッティングをプロたちはどのような心の持ち様で戦ったのか。

初日に7アンダーを叩き出し「200点です」と本人が語るプレーでスタートダッシュした池村寛世。「貯金をどんどん切り崩している感じなので、初日の7アンダーは異次元だったんだなと改めて実感します。プレッシャーというよりピンポジがすごかったり、ラフがすごいので、見ていて面白いとしか思えない。僕は、ここに打っていかないといけない、限られたところに打つコースが好きなので、明日まで楽しめればよいなと思います」。実力者が上位に並ぶなか「なんでこのなかに僕がいるんだろうと思いながらボードを見ていた」と笑ってもいたが、無欲のチャレンジャー精神はここまで。最終日はフェアウェイに行かないことで気持ちが続かなかったという。「初日のよいスタートを守り切れなかった。自分のなかで守るゴルフはあまり得意ではないんですが、そこをもう少し勉強しないといけないなと感じました」。

画像: 最終日、首位タイでスタートした池村。この日はこれまでのゴルフとは打って変わって8オーバーと崩し、トータル5オーバーで8位タイに終わった

最終日、首位タイでスタートした池村。この日はこれまでのゴルフとは打って変わって8オーバーと崩し、トータル5オーバーで8位タイに終わった

キレのあるショットと粘りのゴルフで最後まで優勝争いを続けた木下稜介。「伸ばし合いのコースだとその1つのボギーで結構イライラしてしまったり、フラストレーションが溜まることが多いんですけど、こういう難しいセッティングだとボギーを打っても『まあいいや』とすぐに切り替えられるので、自分に合ってるのかなと思います」と、メンタル面の成長を口にし、日本一に手がかかったかに見えたが……。「アイアンショットに関してはすごい手応えはあったんですけど、やっぱり最後のバック9 で優勝争いがかかったときになかなか……。上がり3 ホールですかね。バーディチャンスを作れなかったのは課題です」。今さらながら1打の重みを感じることとなった。

画像: 池村と同じく首位タイでスタートした木下。4日間唯一オーバーパーがないゴルフを魅せた

池村と同じく首位タイでスタートした木下。4日間唯一オーバーパーがないゴルフを魅せた

3度目の日本一を狙った”日本一曲がらない男“稲森佑貴は、「気持ちは落ち着いているんですが、ずっと気を張っているので、後半になると頭がおかしくなってくるというか。何をやってるんだろうな、みたいな、混乱状態じゃないですが、そんな感じでした。最後まで諦めないようにしたほうがいいのかなと思ってやっていました。体力より気力のほうの消耗が激しいですね」と”ティーショット気疲れ“を語っていた。最終日は朝からショットの調子がよくなかったらしい。ジャンボ尾崎というビックスターに並ぶ日本オープン3勝というプレッシャーは感じていたのか。「ちょっとはありましたけど、このセッティングなのでこだわりを捨てて、自分のできることに徹していました。運がなかったところも少しあったのでしょうがないなと思って、ダボだけはしないようにしました」。運も味方につけてこそ、ビッグスターの成績をとらえることができるのだろう。

画像: 曲がらない男だからこそ、ドライバーショットへの気遣いは人一倍の稲森

曲がらない男だからこそ、ドライバーショットへの気遣いは人一倍の稲森

参戦中の欧州ツアーをいったん休んで、地元で日本一の称号を狙った昨年の賞金王、中島啓太。3日目までは我慢のゴルフだった。「苦しい展開だったので、なんとか悪い流れを切りたかったんですけど、ラフに行き続けていたので……。あと1日、フェアウェイを狙って力を出し切りたい。まだ全然チャンスはあると思うので、諦めずに頑張りたいと思います」と最終日をスタート。しかしショットの不調は修正できなかった。「週末苦しかったので、見に来てくれた皆さんには申し訳ないなと思います」と言葉少なに会場を後にした。

画像: 首位と2打差の5位からの逆転を狙った中島だが、バーディがないラウンドになり、6位タイでフィニッシュ

首位と2打差の5位からの逆転を狙った中島だが、バーディがないラウンドになり、6位タイでフィニッシュ

最終日、持ち味の粘りのゴルフで2アンダーとし、4位に浮上した金谷拓実は、「ティーショットが本当に大事で、週末は特にそのことだけを考えてプレーして、今日は本当にチャンスも多く作れたし、今できる最大限のプレーはできました。グリーンは難しいし、本当にオープンらしかったけど、来年はもっとドライバーを打てるホールが増えたらいいなと思います。 ドライバーを使用したのは3番ぐらい。やっぱりファンの人もちょっと寂しいかなと思ったから。パー5とかも刻むようになっちゃうから、それは寂しいんじゃないかなと思う。まあでもそれが日本オープンなんですけど。今週も最後まで諦めずにいいプレーができたとは思います」。

画像: 最終日5バーディ、3ボギーで伸ばし、2オーバーで11位タイから4位に上がった金谷

最終日5バーディ、3ボギーで伸ばし、2オーバーで11位タイから4位に上がった金谷

2度の賞金王、地元の声援も味方につけ、クールにプレーし続けた今平周吾は、低い球でフェアウェイキープを続け、肝心な場面でパットを入れまくり、オールラウンダーの真骨頂を見せつけてくれた。「距離が残ってもフェアウェイキープに徹したのが勝因です。今日はドライバー1回使用。4日間では6回です。アンダーパーが目標だったので、周りは気にせずに、上がり3ホールでボードを見ました。最近の若い子は、試合慣れしていますし、飛ぶ選手が多いので、安定性とかパッティング、アプローチの技術で勝っていかないといけないと思います。こういう難しいセッティングだと、有利になるときもあります」。

画像: クールな今平が大きなガッツポーズをするのは珍しい

クールな今平が大きなガッツポーズをするのは珍しい

18番のロングパットを決めての、らしからぬ”雄叫び“は、マネジメントに徹した自分へのご褒美だったのだろう。

ギャラリーからは、「ティーショットでドライバーをあんなに持たない選択ってあるんだね」「正確性ってゴルフにこんなに大事なんだね」「プロたちの攻め方が、それぞれ考えられていて面白かった」などという声が聞こえた。ゴルフ力アップにつながる発見がある――それもナショナルオープンの大きな意義かもしれない。

PHOTO/Tadashi Anezaki

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