ゴルフは起こったことに鋭敏に反応せず……
アマ・ゴルフの世界 中部銀次郎「広野を往く」③
中部が大学二年の頃だった。「日本アマ」のメダリストにはなるものの、マッチプレーになるとコロッと負ける。何年か、そういうことがつづいた。
そんな折、石井が独り言でも言うように、「グリーンに乗ったボールはワンパットで入るものだと思っておくことだね」と呟いた。
<相手はワンパットで入るものと思え>
中部はこの呟きを聞き洩らさなかった。目からウロコが落ちたらしい。心のどこかで“スリーパット”を期待していた。相手が失敗してくれれば自分は楽になる。
しかし、そういう”期待“で相手のプレーをながめていて、もしワンパットで入れられたら期待が大きければ大きいほど、今度は自分の心が動揺する。スリーパットはそ...