「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

大慣性モーメント時代の終焉? 逆戻り現象が見えてきた

GD 「タイトリスト」のドライバーを振り返ってみると、2011年の『910』(ナインテン)が大ヒットしました。それ以前の『909』までは、USPGAツアーで使う選手はいたけども、ヘッドスピードの速い上級者じゃないと打てない限定感がありました。

『910』は普通のアマチュアでも打てますよ、飛距離も出ますよ、ということが口コミで広まり大ヒットしました。その後の『913』、『915』では正統進化ということで、1つずつ飛ばしの機能を加えていたったように見えます。『915』に至っては、ソールのフェース寄りにスリットを入れて飛距離アップを意識した進化が見えました。

『917』を経て「TSシリーズ」に移行しますが、TSシリーズも『TS』、『TSi』、『TSR』の3回のモデルチェンジでもタイトリストの路線を守りながら進化させてきました。

でも、ドライバー市場は大慣性モーメント時代に入っていって、少し存在感という意味では他メーカーに隠れていたところがありましたが、今回「TSシリーズ」から「GTシリーズ」に変わったことで、またちょっと違うところに走り始めるのかなって見えるんですよね。

長谷部 「GT」はジェネレーションテクノロジーの略なので、新しいスタートがこのモデルだとすると、このモデルを開発する中で、いろんなアイデアが検討された中の1つを選んでいると思うので、次の2年後、3、4年後に出てくるモデルは、そのジェネレーションの新しい時代に対しては正常進化をしていく第1歩だと思います。

その中で、ポリマー樹脂を積極的に採用してクラウンに使った。今後、このポリマーの使用範囲が増えるのかもしれませんし、違う素材を考えるかもしれませんが、色々トライアンドエラーした結果、慣性モーメントとか重心位置は、ある程度タイトリストの中では決着しつつあるのかなって気がします。

新しいチャレンジをしなくても、大体この辺が美味しそうだなというのが見えている。『GT2』、『GT3』で多くのプロをカバーしているという話があるようなので、重心の目標設定は結構熟成されているのかなって気はしますけどね。

フェースの中央部にアップグレードされた「スピードリングVFTフェース」がハメ込まれる。フェース外周部を補強し安定させたことで、ボールスピードを最大化させる働きがある

GD 「タイトリスト」が『9シリーズ』でドライバーの主導権握った時、他メーカーから大ヒットしたモデルがなかったように思います。

長谷部 他社が色々やりすぎちゃって、色々出来過ぎちゃってたと言うことでしょうか。「テーラーメイド」、「キャロウェイ」が新製品をバンバン出したことで、ゴルファーがわからなくなるっていうことはあったと思います。

今回の「キャロウェイ」がそう見えるし、『トリプルダイヤ』が結構売れているという話を聞くと、ストレッチしていないものが実はいいんじゃんっていうようにも見えるし、 その辺、メーカーの方針がちょっとよくわかんないですよね。できることと市場で売れることがちょっと違うようになってきています。

GD トリプルダイヤには『トリプルダイヤS』もありますが、市場で売れているのがトリプルダイヤのほうだとすると、雰囲気的には『GT2』、『GT3』と重なるような。そうなると大慣性モーメントの逆戻り現象がもしかしたら起きつつしつつある?

長谷部 逆戻り現象については古い話ですけど、460ccが出た時もあって、「ナイキ」の『サスクワッチ』のような異形のものがあった時にも 一時盛り上がって、また戻ってきたのに近い気がします。

460ccまでいったけど、430ccがほぼいい体積だよねって。今は460ccで機能が熟成されているんだけど、異素材を使って重心を後ろに持っていったけど、やっぱりダメだねって戻ってくると言うことを「テーラーメイド」、「キャロウェイ」が今やっているとしたら、「タイトリスト」はそんなに無茶せずに静観していて、ちょっと試してみたけど、戻ってきたみたいなところがあるんじゃないですかね。

GD これってウサギとカメじゃないですか?

長谷部 カメという言い方が正しいかわかりませんが、あんまり右往左往しないでいたら、いつの間にか上に行っていたという気がしないでもないですね。

GD 結果的に落ち着くところに落ち着くとするのであれば、行って戻ってくるより地道に手前から行きましたと。

長谷部 そのほうが信頼も失わないですね。ブランドの信頼も失わないから、タイトリストユーザーが根付いているような気がしますね。

GD 今回、「タイトリスト」でフィッティングをしてもらって、ロフト11度が良かったんですが、現在のロースピン化になってくると、大きめのロフトのほうが効果があるんじゃないかなって思うんですけど。

長谷部 打ち出し角を上げていくという時に、無理してアッパースウィングで打たなくていいし、少々打ち込んでも低重心だからスピンが増えないという安心感があるんだったら、ハイロフトを選ぶのが一番楽ですし、つかまりも良くなるので、いいことだらけです。

ただ、ロフト表示って皆さん気にするじゃないですか。「9.5度神話」じゃないんですけど、それがようやく10.5度になり、別に0.5度の差だけど、寝ていても違和感ないよ、あとはスリーブ調整でなんとかなるよっていうことを考えてみた時に、11度という選択肢はありだと思います。

GD 「タイトリスト」のカチャカチャ(シェアフィットCG)は、意外と顔の変化があんま起きないので、よくできているなって思います。

「テーラーメイド」だと、ロフトを増やすとちょっとフックフェースになります。逆に多めのロフトのものを減らすとフェースが開いていい顔になります。

長谷部 今回の『GT』は不思議とスリムに見えましたけど、これまでの「タイトリスト」のスリーブは非常に太くて、フェースプログレッションも大きめに見えるところがあったので、少しずつ改善されています。

フェースの向きに対しても非常にこだわりを持っているところも、上級者に支持される理由だと思うので、細かな気遣いというか、配慮が今回のGTには詰まっている気がします。

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