タイトリストの新モデル“GT“シリーズから『GT2』ドライバーを分析。近年はボール初速を突き詰めたクラブ開発がなされ、「タイトリストスピード」の頭文字を取った“TS”シリーズが展開されていました。『TS』、『TSi』、そして前モデルの『TSR』と3世代に渡り多くのツアープロから支持を獲得してきたドライバーです。クラブ設計家の松尾好員氏によれば「今モデルからタイトリストのクラブ設計の方向性に変化が見られた」と言います。前モデルの『TSR2』と比較しながら『GT2』の性能を紐解いてみた。

【試打クラブスペック】ロフト角●10.0度 ライ角●58.5度 体積●460cc 価格(税込)●12万9800円 ※メーカー公表値

浅重心化を進めるタイトリストの狙いは?

GD タイトリスト『GT2』ドライバーを前モデルの『TSR2』ドライバーと比較しながら分析していただきます。ヘッドデータで何か気になるポイントはありますか?

松尾 ヘッドデータを見てみるとクラブ作りの方向性がシフトチェンジしたと感じるポイントと継承されている部分がありました。

GD 具体的にはどの部分ですか?

松尾 重心深度、ヘッドの慣性モーメント、ネック軸回りの慣性モーメント、重心距離の4つです。

GD では重心深度からよろしくお願いします。

松尾 『TSR2』が42.5ミリ、『GT2』が40.0ミリとなっています。基準値(39.0〜40.0ミリ)と照らし合わせると前モデルは非常に深い設定だったことに対して、今モデルでは標準値に落ち着いています。ちなみにこの浅重心化は前々モデルにあたる『TSi2』から約2ミリずつ浅くなっています。

画像: 左から『TSi2』、『TSR2』、『GT2』。モデルチェンジごとに重心深度が浅くなっているという。クラブ設計の方向性の変化が表れているのかもしれない

左から『TSi2』、『TSR2』、『GT2』。モデルチェンジごとに重心深度が浅くなっているという。クラブ設計の方向性の変化が表れているのかもしれない

GD 重心深度の変化が「タイトリスト」のクラブ作りのシフトチェンジのヒントになっているかもしれないですね。

松尾 はい。重心深度と関連してくるのがヘッドの慣性モーメントになります。『TSR2』が5021g・㎠、『GT2』が4835g・㎠と小さく抑えられています。ここから大慣性モーメントを狙うヘッド設計からシフトチェンジを図っているのではないかと考察しています。

GD 慣性モーメントを大きくして打点のブレに強いヘッド設計とは別の方向となると、クラブの操作性に比重を置いた開発に向かっていると言えるのでしょうか?

松尾 おそらくそうではないかと……。重心深度をどんどん浅くし、それに伴いヘッドの慣性モーメントも低くなっていっています。それによってヘッドの横幅がコンパクトになりフェースローテーションがしやすくなります。実際にヘッドの操作性を判断できるネック軸回りの慣性モーメントを比較すると『TSR2』が8266g・㎠に対し、『GT2』は7869g・㎠と小さくなっています。

GD 『TSR2』よりもフェースローテーションがしやすい、操作性の良いドライバーになったと言えそうですね。では重心距離はいかがですか?

松尾 重心距離は『TSR2』が41.7ミリ、『GT2』が40.8ミリとなっており、フェースの中心部よりもトウ側に重心が設定されているフェードバイアスヘッドと言えます。

GD なるほど。これまでタイトリストの「2」と付くドライバーの特徴であるフェードバイアス設計は継承されているんですね。では『GT2』ドライバーはどんなゴルファーにおすすめですか?

松尾 他のヘッドデータで言うと、重いヘッド重量設計と小さなリアルロフト角の組み合わせは、ボール初速を上げやすくする考えがあると思います。これは「TSシリーズ」から引き続き継承されているので、「タイトリスト」の飛びへの理念として貫いていると感じます。過去モデルよりも操作性が良くなっていることを踏まえると、適度にボールをつかまえながらフェード系弾道でスコアメイクしたいゴルファーは試されるといいと思います。

人気シャフト「ツアーAD DI-6」を装着して打ってみた

ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートをしてもらいます。試打および計測ヘッドは10.0度、シャフトは「TOUR AD DI-6」でフレックスSです。掲載数値はすべて実測値となります。

重心距離が40.8ミリとやや長いおかげで引っかけを恐れずに振っていける

クラブの長さが45.38インチとやや長く、クラブ重さが319.1グラムと「非常に重い」設定からスウィングウェイトがD4.8と「非常に大きく」なり、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが298万g・㎠と「非常に大きい」です。計測数値のみで推察するとドライバーのヘッドスピードが49〜50m/sくらいのゴルファーにとってタイミング良く振りやすくなっています。

ヘッドは従来の「2」シリーズ特有の横幅が広い丸型形状で、さらにアドレスでの強めのオープンフェースは継承され、フェースのトウ側に逃げ感も出ており、球をつかまえ過ぎないイメージが湧きます。

実際に試打したところ前モデルよりも強いオープンフェースで、より球をつかまえ過ぎないイメージで構えられます。丸みの少ない平らなフェース面も特徴です。

画像: 左が『TSR2』、右が『GT2』。横幅が広い顔は継承されている

左が『TSR2』、右が『GT2』。横幅が広い顔は継承されている

試打シャフトはバランスの良いしなり感で振りやすく、インパクトの再現性もいい感じです。ただしクラブ重量が重く、スウィングウェイトがとても大きいので、しっかり振り切るにはかなりのパワーが必要です。

ヘッド重量が重く、リアルロフトが前モデルよりもさらに小さく厳しい設定にされているおかげで、ミートした時にボール初速が出しやすいです。

重心深度を見てみると過去モデルの『TSi』から『TSR』と徐々に浅く設定されてきており、今モデルではさらに浅くされていることから、大きなヘッド慣性モーメントを狙っていないと考察できます。

『GT2』のSS(スイートスポット)はフェースの中央よりも少しトウ寄りに位置されており、軽めのフェードバイアス設計になっています。

ヘッドの操作性を判断できるネック軸回りの慣性モーメントは『TSi』や『TSR』よりも小さく抑えられていますが、それでも基準値(7000〜7299g・㎠)からすると大きい設定になっています。ダウンスウィングでのヘッドの返りが遅いこと、そして強めのオープンフェースの組み合わせから叩きながら飛ばせて、安定したストレート〜フェード系の弾道を打ちやすいドライバーです。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年9月17日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より

タイトリスト「GTシリーズ」の試打動画はこちらから

画像: - YouTube youtu.be

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松尾好員氏による最新フェードバイアスドライバーの考察はこちらから

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