1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材し、現在は日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員として活動する吉川丈雄が、ラウンド中に話題になる「ゴルフの奥深い知識」を綴るコラム。第73回目は、ゴルフの道具やスポーツ科学の劇的な進化によって、ツアープロの飛距離が異次元のレベルに達した一方、アマチュアとの「飛距離の格差(乖離)」がこれまで以上に広がってしまっているという現象と、それに伴うコースの長大化問題、そして「飛ばなくなること」へのアマチュアゴルファーの切実な危機感について。

驚異的な進化を遂げた道具とツアープロの異次元な飛距離

画像: ゴルフボールの歴史

ゴルフボールの歴史

ゴルフの進化は道具の進化ともいわれている。皮などで作られた袋に羽毛を詰め込んだフェザリーボールより天然ゴムのガッタパッチャボールのほうが飛んだし、バラタカバーのボールよりも新素材アイオノマーによるツーピースボールは打感が硬く感じたものの飛距離は稼げた。

ボールだけではなく、クラブの進化も凄まじいものがある。一番飛距離が出せるドライバーは樹齢200年というミシシッピー流域に育ったパーシモン(柿の木)が素材だった。パーシモンをオイル漬けにして硬度を増し、削ってヘッドにしたわけだ。その時代のアイアンは、マッスルバックだけだった。その頃の飛距離はツアープロで280ヤード前後、アマチュアならばおおよそ230〜250ヤードだったと記憶している。

この飛距離だからアマチュアはパー4のホールが400ヤード超えると長いという印象を受け、パー3で200ヤード近くあるとワンオンはかなり難しいと認識をしたものだ。

画像: 左からQi10/サスクワッチ/パーシモン、昨今「慣性モーメント」という単語が溢れているが、当時ナイキが発売した「サスクワッチ SUMO2」も上下慣性モーメントも非常に大きく、上下左右の慣性モーメントを足すとほぼ10Kに達していたという

左からQi10/サスクワッチ/パーシモン、昨今「慣性モーメント」という単語が溢れているが、当時ナイキが発売した「サスクワッチ SUMO2」も上下慣性モーメントも非常に大きく、上下左右の慣性モーメントを足すとほぼ10Kに達していたという

その時代に比べればボールもクラブも飛躍的に進化していると断言できる。結果、飛距離も驚異的といえるほど飛ぶようになった。米ツアーの最長飛距離は400ヤード超えだし、平均で300ヤードは当たり前でしかも高弾道だ。プロなら5番アイアンで220ヤード前後打てるし、160ヤードならば9番アイアンで軽く届く。

だが、アベレージゴルファーの飛距離は道具の進化の恩恵を受けていても、ツアープロのような飛距離は望めないし、160ヤードは9番アイアンでは届かない。もちろん個人差はある。ちなみに私事だが130ヤードは9番アイアンで打っていた。現在では120ヤードがやっとだ。ストロングロフトの恩恵を受けながらもパワーの減退を救うことはままならない。かつて使用していたアイアンではきっと100ヤードぐらいしか飛ばないだろう。

画像: ウェイトトレーニングを早い段階で取り入れたタイガー・ウッズは、その飛距離からトレーニングの重要性を知らしめた最大の立役者と言えるだろう

ウェイトトレーニングを早い段階で取り入れたタイガー・ウッズは、その飛距離からトレーニングの重要性を知らしめた最大の立役者と言えるだろう

なぜ、プロは飛ぶのだろうか。道具の進化だけではない、フィジカル的にも優れているのだろう。ゴルフのスウィングは科学的に解明されているし、どの筋肉を鍛え、どのように動かせばより大きなパワーを生み出すことができるかも解明されている。その昔「トラック1杯分ボールを打てば上手くなる」といわれたものだが、このような非科学的なことは誰も言わなくなった。

アマチュアとプロの飛距離の乖離は想像以上のものがある。飛距離の違いは新しいコースに反映されることにもなる。タイの難コースといわれるバリシアーGLでは500ヤード超でもパー4だったし、パー5は600ヤード以上あった。プロのティーショットが300ヤードなら500ヤードのパー4も不自然ではなく、600ヤード以上のパー5でも300+250なら50ヤード強のアプローチになりプロにとって難しいとは言い難い。

「明日ゴルフに行かないか」と近所のゴルファーに誘われソルトレーク郊外のコース(ジョニー・ミラー設計)でプレーをしたことがある。各ホールがともかく長かった。3ホール目にふとスコアカードを見ると全長は7500ヤード以上、コースレートは75.5もあった。20年以上も前の話だ。

アベレージゴルファーが使って飛ばせるクラブがあればいい、という考えはあるがプロがそのクラブを手にすればより大きな恩恵を享受することになる。不条理のような何とも言えない飛距離の差は何とか解決できないものだろうか。飛ばなくなるとゴルフを引退するきっかけになるといわれている。そのためにも夢のような道具が欲しいのだ。

文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中。

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